金融と最先端のテクノロジーが交わることで、これまでにはなかった新しいサービスや商品が日々生まれています。本連載では、金融業界の最新動向や新たな分野の金融サービスを紹介していきます。(毎月第3月曜日更新)

普段の買い物に、キャッシュバックのチャンスあり

投資や貯金はちょっとハードルが高く感じられるかもしれませんが、「節約」は多くの人が取り組んでいます。なるべくお金を使わない、安く買う、お金代わりに使えるポイントを得る。これらに加えて、支払い代金の一部が払い戻される「キャッシュバック」も節約術の一つと言えます。

サービスの入会や車の購入など一時的なキャンペーンで行われるイメージが強いキャッシュバックですが、スマホアプリの「CASHb」(キャッシュビー)では、普段の買い物で購入した日用品や生活必需品からキャッシュバックが得られるんです!

今回はキャッシュビー株式会社バイスプレジデントの斉藤舞佳さんに、「CASHb」の特徴やサービス誕生秘話などを伺いました。(取材日:2019年7月5日)


斉藤舞佳(さいとう・まいか)
キャッシュビー株式会社 バイスプレジデント
キャッシュビーの立ち上げ時から事業に参画。広告デザインに従事してきた経験を生かして、ブランディング全般やアプリ内で流れる広告動画の作成など、同社のクリエイティブ全般を統括する。

広告動画を見て、レシートとバーコードを送るだけ

―「CASHb」はどんなアプリなのでしょうか?

斉藤 「CASHb」は、お買い物の際にアプリを利用したユーザーにキャッシュバックをするアプリです。似たようなサービスでポイントを受け取れるアプリはありますが、最終的に“現金”を受け取れるアプリはこれまで国内ではリリースされておらず、「CASHb」が日本初となります。


「CASHb」の紹介動画
(※現在、PayPalやギフトカード、電子マネーへの交換は行っていない)

―使い方を教えてください。
斉藤 「CASHb」では、食品、飲料、美容・健康など、さまざまなタイプの商品のキャンペーンを用意しています。ユーザーには、キャンペーンの中から欲しい商品の「広告動画」を視聴してもらい、その後、商品を購入してもらいます。

商品購入後に、購入時に受け取った「レシート」と「商品バーコード」の写真をアプリ内で送信すると、「CB」というキャッシュバックの元となるアプリ独自のポイントを受け取ることができます。CBは「1CB=1円」として換算され、CBを1000ポイント以上貯めると、1000CB単位で現金に交換できます。

アプリ版のほか、「楽天銀行」のスマホアプリ内でも「CASHb for 楽天銀行」を提供しており、そちらではCBでなく現金でキャッシュバックを行っています。

筆者も試しに「CASHb」を使ってみた。広告動画ではヨーグルトに含まれる「ロイテリ菌」の解説とともに商品の紹介が流れた。アプリを確認したところ翌日には100CBを受け取れていた

―アプリを使う際に利用料などの費用はかかりますか?

斉藤 「CASHb」の利用にあたって、利用料や手数料などの費用は一切かかりません。ダウンロードも無料でアプリ内の課金もなしです。また、CBから指定の口座に現金をキャッシュバックする際の振込手数料もかかりません。

「CASHb」の運営費やキャッシュバックの原資は、キャンペーン動画を出稿するメーカーからの広告掲載費でまかなっているため、ユーザーには無料でアプリを使っていただけるんです。

―「CASHb」を一言で表すと?

斉藤 チリツモ系サービスでしょうか。「塵も積もれば山となる」を地で行くサービスですね。

CBは一度に多く手に入りませんが、買い物のたびに「CASHb」を使っていただくと、意外とCBが貯まっていきます。既存のユーザーに行ったアンケートでは、「まめに使っていれば、1カ月で1000CBぐらいは貯まる」との声をいただいています。

―キャンペーンで手に入る「CB」はどれぐらいなんですか?

斉藤 キャンペーンによってまちまちです。10~30CBが比較的多いですが、65、80、100CB、なかには200や500CBがもらえるキャンペーンもあります。

アプリ版の「CASHb」では、「全てのメーカーOK」(応募回数に制限あり)という限定キャンペーンのほか、セット購買やWebサイトの閲覧などで追加のCBが手に入る「ボーナス」もあるので、それらを利用していただくとCBが貯まりやすいと思います。

2018年3月からはお買い物やボーナスのほか、店舗利用でCBが手に入る「チェックイン」もメニューに新たに追加しました。

前出のヨーグルトのキャンペーンに応募したら、Webサイト閲覧でCBがもらえる「ボーナス」が現れた。こちらはWebサイトに飛んだ後、すぐにアプリを確認したところCBが付与されていた

「メーカーと消費者をつなぐ」がサービス開発の原点

―サービス開発のきっかけは何だったんですか?

斉藤 「世の中にはメーカーが作った良い商品があるのに、生活者にまで商品が届かない」という、やるせなさがサービス開発の出発点になっています。

弊社代表取締役社長の小川は元々、流通・消費材に特化した企業コンサルタントからキャリアをスタートし、前職では同業界のマーケティング会社で副社長を務めていました。

その間、さまざまなメーカーと関わるなかで、メーカーが消費者とコンタクトを取ること、生活者の反応や要望を知ることの難しさに悩んでいることを知り、「メーカーと消費者をつなぎ、流通・小売り現場にも良い流れを作る。三者がWin-Win-Winとなるサイクルができないか」と考え、そのためのサービスを提供すべく小川が2016年に起業しました。

―「メーカーと消費者をつなげたい」という考えから始まり、なぜキャッシュバックアプリに行き着いたのですか?

斉藤 小川がMBA取得のため通っていた大学に、米国のキャッシュバックアプリ「ibotta」(アイボッタ)の創設者がいた影響が大きいです。

「ibotta」は米国で2千万人以上のユーザーを有するアプリで、「CASHb」と同様にユーザーに広告を視聴してもらいキャッシュバックを行うアプリなんです。日本での需要の高さやサービスとしてのポテンシャルを感じ、「ibotta」を日本向けにカスタマイズし、「CASHb」を開発するに至りました。

―日本だと、ポイントのほうが一般的に浸透しているイメージですが、キャッシュバックのままにしたんですね。

斉藤 正直、迷うところもありました。日本では現金キャッシュバックはそれほど浸透していませんし、キャッシュバックするにあたって口座情報が必要なのですが、スタートアップのアプリに大事な個人情報を提供することに抵抗がある人もいるでしょう。単純に「怪しい」と思われてしまうかもしれません。

しかし、ポイントの場合、利用が特定の店舗やグループに限られてしまいます。そうなるとユーザーの行動を制限することになりますし、どの小売り店舗にもフレンドリーなサービスになりません。現金ならどこでも使えるので、キャッシュバックは踏襲しました。

キャッシュバック先の口座について、サービス提供当初は限られた金融機関のみを対象にしていましたが、現在は、基本的に全ての金融機関(全国銀行協会に属し、金融機関コードが発行されている金融機関)なら、どの口座でも現金を受け取れるようにしました。


2018年9月からは口座情報を登録しなくても、セブンイレブンの「セブン銀行ATM」で紙幣を、「店舗のレジ」で硬貨を受け取れるようになった(最低2,000CB以上から受け取りが可能)

―広告を出稿しているメーカーからの反応は?

斉藤 メーカーからの反響は大きいです。マーケティング担当の方から喜ばれていることは4つあります。
1つ目は商品がどのようなターゲットに響いているのか一目瞭然だということ。ユーザーには郵便番号と生年月日、性別の入力してもらうようにしていますが、広告を視聴して商品を買った人、買わなかった人がわかります。

2つ目は広告視聴直後にアンケートを通じて、言いたい内容が伝わっているか、好感度はどうか、購買意欲を喚起できているかなどの調査を商品に関心を持ったユーザーに直接行えること。
アンケートはスキップもできますが、回答してもらうと追加でCBを受け取れるので、ユーザーのアンケート回答率は高いです。

3つ目は、広告自体のコンバージョンはもちろん、アプリを通じて同一ユーザーの消費行動もわかること。例えばセット購買の組み合わせは何が響いたかなどもデータで記録を残しています。

4つ目は、そうしたプロモーションから消費者調査までを安価に行えること。初期費用はかからず、広告掲載費と成果報酬のみとなるので、マスメディアやネット広告、同様なサービスよりもかなり安いようです。

20~40代の主婦が多く利用。値引き商品も対象になる

―どのような人がユーザーには多いのですか?

斉藤 20~40代の女性。特に主婦の方がユーザーには多いです。「CASHb」はスーパーで値引きされている商品や小売店独自のポイントで購入した商品であってもキャッシュバックの対象となり、小売店で付くポイントとCBの二重取りも可能です。

日頃のお買い物に、「CASHbを利用する」という、ちょっとした行動をプラスするだけでキャッシュバックを受けられる手軽さが、主婦の方たちに受け入れられているのではないかと思います。


なんと、高級アイスの代表格「ハーゲンダッツ」のキャンペーンも! 筆者もキャンペーンに応募し、スーパーの冷凍食品の特売日に3割引で購入したが、ちゃんとCBを受け取れた

斉藤 一方で「CASHb」は買い物のたびにちまちまとレシートと商品バーコードを送るという、人によっては面倒くさく感じることをしなければいけません。その割にキャッシュバック金額は1000円から数千円とそれほど大きい金額でもありません。

そのため、年収が高い人は利用しなさそうというイメージを持たれがちなのですが、そうでもないんです。年収ごとのユーザー分布を見ると200~400万円、400~600万円、600~800万円の人たちが、全ユーザーの約3分の1ずつを占めています。

―今後の新たな取り組みについて教えてください。

斉藤 7~8月中には、スーパーマーケットチェーンの「いなげや」限定のストアキャンペーンを予定しています。商品だけでなく、特定の小売店とのタイアップのストアキャンペーンも拡大していく予定です。

いまの課題は、一人でも多くの人に「CASHb」を知ってもらうこと。それはユーザーだけでなく、メーカー、流通・小売業者にも知ってもらい販促に活用してもらいたいと思いますし、そのために「CASHb」を広める努力をしていきたいです。

代表取締役社長 小川拓也氏からのコメント

―Fintech業界を見渡してどんな印象を受けていますか?

小川 日々、新しいサービスが出てきていますが、多様なサービスが生まれるのは良いことだと思います。その中で、より多くの消費者に新しいサービスが認識され、利用されることが、これまで世の中に無かった新しいサービスの認知や利用にもつながるからです。

今後もいろいろなサービスが生まれ、技術の進化も継続すると思いますが、消費者にとってより便利なもの、よりメリットのあるものが支持されることは明確です。その視点を常に持ち、「CASHb」を進化していきたいと考えています。

(次回は8月19日を予定しています)