本連載では、資産運用を始める前にぜひ知っておきたいポイントをわかりやすく紹介します。第1回は、「リスクとリターンの関係」を取り上げます。世の中には、株式や債券、投資信託など様々な金融商品があります。どんな商品がどのようなリスクとリターンの特性を持つのか、その要因とともに考えます。

  • 「リスク=危険」ではない。投資のリスクとは、リターンが上下に振れる幅のこと。
  • リターンを左右する要因は3つ。全てに変動があるほどハイリスク・ハイリターンに。
  • リスクを左右する要因は5つ。国内の資産か、海外の資産かでリスクは変わる。

はじめに~リスクとリターンのイメージ

資産運用の入門書などでは、下の図のようにリスクとリターンとの関係が描かれています。

リスクとリターンの関係

預貯金が最もローリスク・ローリターン、株式が最もハイリスク・ハイリターンの金融商品とされているのはどうしてでしょうか? 以下、リスクとリターンの意味などを整理しながら、その関係について見ていきます。

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リスクとは「リターンの振れ幅」のこと

リスクという言葉を聞いて「危険」というイメージされる方が多いかと思います。しかし、資産運用の世界では「リターンの振れ幅」を意味します。上の図では、ある期間(10年や20年)のリスクとリターンの関係を平均的に示しているため斜めの直線になっていますが、実際のリターンは日々さまざまなリスク要因によって上下に変動しています。

なぜ株式はハイリスク・ハイリターンなのか

各金融商品がリターンを上げる方法は、

1.利子や配当から得られるインカム・ゲイン
2.元本の値上がりによって得られるキャピタル・ゲイン
3.円高・円安による影響で生じる為替差益

の3つになります。

インカム・ゲイン

主なリターンがインカム・ゲインの金融商品として、預貯金や債券が挙げられます。固定金利の預貯金や債券の場合、利子は一定です。また、会社が出す配当は業績によってゼロになることはあるもののマイナスになることない、というのがインカム・ゲインの特徴です。

キャピタル・ゲイン

キャピタル・ゲインは、投資した元本が短期間で何倍にもなったり、何分の1になったりするものです。代表的な金融商品が株式です。株式のキャピタル・ゲインは、リターンが大きくプラスになることもあれば、マイナス(キャピタル・ロス)になることもあり、ハイ・リスクといえます。

為替差益

為替差益(差損)は、海外の株式や債券などに投資した場合発生します。外貨建ての金融商品を購入した時点の為替レートから円高になった場合、リターンはマイナス、円安ならプラスです。短期的な変動は、キャピタル・ゲインより大きくなることもあります。

下の表は、各金融商品のリスクとリターンについてまとめています。「変動あり」が多いほど、資産運用においてハイリスク・ハイリターンの金融商品と位置付けられます。

各金融商品のリスクとリターン

主なリスク要因は5つ

国内資産には「信用リスク」「価格変動リスク」「金利リスク」の3つのリスクがあり、海外資産はこれに「為替変動リスク」「カントリーリスク」の2つが加わります。以下それぞれのリスクについて見ていきましょう。

信用リスク

信用リスクは、投資した先の会社や国などの財務状況の悪化や破綻により、利子が減額されたり払われなかったり、元本が返済されなくなってしまうリスクです。頻繁に起こるリスクではありませんが、発生すると影響の大きいリスクになります。

価格変動リスク

価格変動リスクは、投資している企業の業績や景気の状況により株価などが変動するリスクです。このリスクは、日々発生します。

金利リスク

金利リスクは、世の中の金利の変動により発生するリスクです。金融機関以外の会社では、金利上昇はマイナス要因、金利低下はプラス要因になります。債券を発行している国や地方なども同様です。こちらのリスクも日々発生しています。

為替変動リスク

為替変動リスクは、投資した時点より円高に振れればマイナス要因、円安に振れればプラス要因となるリスクです。

カントリーリスク

カントリーリスクは、投資した国の信用状況の変化によって生じるリスクです。政治的混乱や内戦などが起こった場合はマイナス要因になり、その国の経済政策や財政政策がうまくいった場合はプラス要因になります。

最後に~リスク要因をどう見るかでリターンも異なる

以上、各金融商品の特徴やリスク要因を通して、リスクとリターンの関係について見てきました。主なリスク要因をプラスと見るか、マイナスと見るかは、投資家の心理状態(強気・弱気)に影響されます。それによりリターンも大きく異なることをお伝えし、この記事を終わらせていただきます。

次回記事「分散投資の種類と効用を知ろう」はこちら↓

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