宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。第4回のテーマは「保険」。保険についてよくわからないという方に向けて、掛け捨て型と貯蓄型の保険の違いや、災害保険を選ぶポイントについて説明します。

万一の事態に備えるにはお金が大切

まずは、このたび台風や大雨の影響により不幸にもお亡くなりになられた多くの命にご冥福を申し上げるとともに、多大な被害にあわれた方の今後の復旧をお祈りいたします。

私が「宮崎発マネー相談室」の記事の執筆を始めて以来、台風シーズンと重なっているとはいえ、竜巻、洪水、土砂崩れ、河川の氾濫、そして地震と立て続けに自然災害が発生し、いまだに終わりがない状況にあります。いかに日本が天災大国であるかを思い知らされるのと同時に、いかに自然の驚異、天災と向き合っていくべきなのかと、毎年のように天災の被害が拡大する現実の前に、思いを新たにします。保険に携わる者として、あらためて「お金」なしでは生きていけない時代なんだなと、思い知らされています。

今回は「保険」を通して、自身の長生きと遺族のための「生命保険」と、自然災害などのリスクに備えるための「損害保険」のあり方について考えてみることにしました。今回取り上げるのは、若いご家族にありがちなこんな質問です。

【質問】
病気や入院が怖いから保険? まったくお金を貯めんといかんし余裕もないよ! 子供も生まれそうだし! 周りからは「保険は入っちょったのが良いよ~」と言われるけど、よくわからんです。

保険について若い方が共通して言うのは、「よくわからない」「お金に余裕がない」「今は元気です」などなどです。

この質問をした方は、25歳のサラリーマンで、結婚したばかりの男性。親の勧めで話をうがかうことになりました。
このような相談を受けたとき、まずはその方の思いや考え、失礼ながら年収などをお聞きしながら話を進めていきます。なぜ年収?と思われるかもしれませんが、世帯を持つことの意味は深いものがあります。独身だった頃と違って、結婚してからは家族(子供)、教育、住宅、老後の生活と、お金をバランスよく使ったり、貯めたりすることが重要になります。保険料を決めるのに、いくら年収をもらっているのも聞かないで話を進めるのは、逆に失礼です。

掛け捨てか貯蓄型か? 貯金の有無がポイント

私がいつも皆さんにお聞きするのは、「貯金をしているのですか?」です。貯金があれば、生命保険を利用してお金を貯めることもできるからです。

生命保険には「掛け捨て型」と「貯蓄型」があります。
掛け捨て型と貯蓄型の大きな違いは保険料です。遺族の保障・死亡保険では、掛け捨て型は保険料が安く、貯蓄型は保険料が高い。自身の長生きのための医療保険(入院保険など)は、掛け捨て型は同じく安く、貯蓄型はどちらかというと、高めかつ満期が設定されている商品が多くなっています。
もちろんその名前が示すとおり、掛け捨て型は一度払った保険料は戻ってきませんが、貯蓄型は満期が来たときや解約したときにお金が戻ってくるという違いもあります。

【図表】保険の掛け捨て型と貯蓄型の違い

掛け捨て型 貯蓄型
保険金 安い 高い
掛け金は
戻ってくるか?
戻ってこない 満期に戻ってくる。
途中での解約も可能。
運用状況によっては
増えて戻ってくる
契約内容の変更 比較的しやすい 解約が必要な場合も

以上を踏まえて話をすると、この方は、財形預金を強制的にお給料から天引きされていましたので、安価な掛け捨てをお勧めしました。掛け捨て型のメリットは中途の内容変更などしやすいことですが、貯蓄型は、契約を交わした時点の契約内容に応じて利率や返戻金(へんれいきん。解約したときに戻ってくるお金)、満期金などが決まるので、貯蓄型で保障内容を変更する場合は、いったん解約するなどしていく必要があります。当然、保険料は年齢や病歴による影響が大きく、場合によっては月々の支出が大幅に増えることもあるので、メンテナンスが難しいかと思います。

ただ、死亡保険の終身型などは、解約返戻金が貯まっていれば、満期を迎える前に貯まったお金の一部を解約することもできます。保険によっては、死亡保障がありながら積立投資もできるという、一石二鳥の状態を作ることができます。

忘れてはならないのが、死亡や病気などの保障があり、なおかつお金を増やせる機能がある貯蓄型の生命保険の多くが、日本円がゼロ金利の今は、「外貨建て保険」になってしまうということです。
外貨建て保険というと、最近はコンプライアンス(説明責任)の件で問題になることもありますが、商品そのものは仕組みをきちんと理解したうえで、上手に使えば有効な資産運用の手段になります。海外の高金利を利用して、かつ死亡保障もあり、「為替リスク」を理解できるのならば、保険を選ぶ際の選択肢になるのではないでしょうか。保険に加入したことを忘れていて、ほったらかしたらお金が貯まっていた! という状況も期待できます。

今、月に何万円も貯金ができるくらい余裕がある方は、その一部で貯蓄型の生命保険を利用することで、前回までにお話ししたつみたてNISAなどとは別の、資産運用の一部として考えてもいいのかもしれませんね!

医療技術も年々変化しています。生命保険も、最新の医療技術に対応した商品が生まれています。がんなどの病気はもちろん、将来自分自身が認知症になったり、介護が必要になったりしたときも、頼れるのは「お金」です。
少子高齢化のため、公的年金制度や社会保障制度に頼るのが難しい現代では、若くても老後に備える必要性に迫られています。人生100年時代の、長生きすることによるリスク。そんなリスクに備えるための保険は身近であるからこそ、「よくわからない」「お金に余裕がない」ですませるわけにはいきません。メンテナンスを怠ってはいけないし、また必要以上に保険に入りすぎても、普段の生活に使うお金がなくなってしまえば何にもならないのです。

医療技術
医療技術と同じく、生命保険もどんどん新しい商品が開発されている

火災保険で重要な「新価」と「時価」

最後に、「損害保険」の火災保険についても触れたいと思います。

最近ニュースでもよく見かけますが、今回の台風のような大災害にあったのに、保険金が少ししか払われないケースが増えています。
なぜ、保険金が支払われないのでしょうか?

それは、火災保険に加入する段階で、一番重要なことが置き去りになっていたからです。特に、中古の住宅を購入するケースでよく見られます。
保険価格を決める要素に「新価」と「時価」があります。火災保険は、新価と時価のどちらを基準にしても加入できるのですが、新価より時価の方が低い場合、新価で加入していないと、被災した家を元通りにするのに必要な保険金は100%補償されません。このルールが見過ごされているのです。

住宅
今の家と同じ水準の家を新しく建てるのに必要な「新価」を基準とした火災保険に加入しないと、万一のときに十分な補償を受けられない可能性がある

新価と時価について、例を挙げて説明します。
30年も前に建築された、当時1000万円だった建物に、古い建物だからいいや!ということで1000万円で保険を付けた。これでいいの?
答えは×です。100%の補償が必要だったら、1000万円ではなく、約2000万円の保険に加入しなければならなかったのです。
これが、今の時点で新たに建て直したらかかる価格「新価」の考え方です。「時価」は30年前の、これまでの経済成長率が加味されていない価格です。新価は2000万円で、時価は1000万円。ですから、当然「新価」で保険加入しなければ、災害が起きても保険金の削減対象になります。

1000万円の損害にあったのに、支払いは500万円だった! あり得る事実です。特に積立で火災保険に加入しているケースなどは、保険料の支払いが高めになります。高い保険料を嫌って支払額を抑えると、保険金を減らすことになり、災害の場合に十分な補償を得られないことも考えられます。

「保険屋さんに任せてるから大丈夫」ではなく、保険料と補償内容をきちんと確認して「使える保険」を選ぶことが大切です。「災害大国」の日本で暮らしているのですから、ご自身の資産を守る意味でも、火災保険も資産運用の一部ととらえなければいけないでしょう。