宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回は、小田さん自身の例をもとにiDeCoの資産配分を考察するとともに、元本確保型商品の仕組みについても深く掘り下げていきます。
- iDeCoの基本は株式、債券、元本確保型の3つ。積立期間が短い人は安定重視で
- 小田さんのiDeCoの配分は株式が約80%。アクティブ型は手数料と中身で選ぶ
- iDeCoの元本確保型商品には定期預金、積立傷害保険、積立年金保険などがある
基本は株式・債券・元本確保型の3種類で十分
【質問】
iDeCo(個人型確定拠出年金)の仕組みはだいたいわかったけど、実際のところ、本当に運用商品で上手く運用できるんですか? 悪質な保険の営業マンと同じで、お客には勧めるが自分では入らないなど、金融機関が儲けたいだけじゃないの? よかったら、小田さんのiDeCo運用がどうなってるか? これから商品を組み換える予定はあるのか? 教えてくれませんか?
前回に引き続き、iDeCoの「何で?」にお答えしていきます。
今回の質問者のように、私の運用について教えてほしいという質問は多くあります。確かに「今現在のリターン」が出ていれば、それを元に「同じ商品でリターン」を狙いたい気持ちはわかります。それが簡単にできればいいのですが、そうはいきません。経済(相場)は日々動いていて、今日と明日では同じ結果にはならないのです。
ところで、相談者の方は保険外交員さんといい関係がつながっていないようですが、金融機関がiDeCoを勧めるのは、保険の販売員さんが「自分本意」で儲かる商品を売るのとは意味が違います(もちろん、「自分本位」の営業をするのは一部の外交員だと思うのですが……)。
後で失敗(元本が減る)しても、保険と違って、iDeCoの加入者は金融機関に責任を問えません。あくまでも自分の責任としなければならないことをご承知ください。ですから、商品の選定から分析、そして先の経済予測が必要なのです。初めての方は専門家などにアドバイスを受けてみるのもいいと思います。
さて私のポートフォリオですが、実は約4年前にiDeCoを始めたばかりで、まだ完全なポートフォリオは構築されていません。あくまでも参考意見として見てください。
私の場合、運用商品はわかりやすいものだけで構成していて、3商品しかありません。iDeCoの運用は株式、債券、元本確保型の3つあれば十分だと考えています。投資に慣れてきたら、REITなどを組み込むのもいいと思います。
そして、現状ではiDeCoは60歳までしか積立できませんので、私のようにあまり若くなく、積立期間も短い人は、株式比率を低くした安定重視の構成で望むべきでしょう。
日本株式のインデックスファンドは14%の増益
とはいえ、私は仕事上、投資の経験もあるので、株式比率約80%の“積極型”で運用しています。私の世代より、むしろ私より若い20代、30代の方が参考にしていただくといいかもしれません。
商品構成は、
①日本株式インデックスファンド(TOPIX)60%
②バランスファンド(国内株式31%、外国株式14%、国内債券33%、外国債券15%、エマージング株式5%、短期金融資産2%)25%
③元本確保型傷害保険 15%
の3商品に絞っています。
1年くらい前に、3つの配分を変更(株式比率アップ)して望んでいるところです。
成績ですが、単体商品では2020年12月15日現在、①約14%、②約5%、③約0%の増益となっています。
①は株価指数に連動するパッシブ運用、②は複数の株式と債券のバランスになっているアクティブ運用です。アクティブ運用の投資信託は、どうしても手数料(信託報酬)が多めにかかってきますので、商品を決める際は、よく考えて選んでいます。
今後の方針は、新型コロナウイルスのワクチンの接種状況にもよりますが、今の配分で来年の中旬まで行き、どこかのタイミングでスイッチング(預け替え)と、2回目の配分変更も模索しています。
元本確保型もいろいろ。中途解約時の金利などにも注意
ここでワンポイントアドバイスとして、素通りしがちな③の元本確保型商品の仕組みと特徴、注意点を解説していきます。
元本確保型の主な分類は、Ⓐ定期預金、Ⓑ積立傷害保険、Ⓒ積立年金保険の3種類です。運用の仕組みは、加入者のお金を保険会社や銀行に一定期間預けて、定められた期間が到来したときに、預入時に約束された保証利率・金利が利息として付くというものです。ただし、元本確保型を満期前で解約すると中途解約となり、金利の引き下げや解約控除などが発生してしまいます。
この3つの分類のうち、どれを選べばいいのか? それぞれの特徴は微妙に違うので、選ぶ前に確認してみてください。
私はⒷ積立傷害保険を選んだのですが、理由は簡単です。Ⓑは傷害保険が付いているからです。「えっ、保険? 保険料が割り増しされるんじゃないの?」と思われがちですが、積立金の元本はⒶもⒸも全て同じ。積立傷害保険は運用期間中に事故によるケガで死亡した場合、病気で死亡した場合よりも受取金額が割り増しされ、病気死亡時返戻金の額の1.1倍が支払われます。ここが他にはない違いです。
また、満期前に中途解約した場合、Ⓐ定期預金は適用金利が引き下げられます。Ⓒ積立年金保険では解約控除の費用が差し引かれ、元本を下回ることもあります。その点Ⓑ積立傷害保険は、中途解約すると保証利率が引き下げられますが、元本を下回ることはないのです。
以上のことから、私はⒷ積立傷害保険を選びました。
iDeCoならではの手数料
最後になりますが、iDeCoの最大の弱点について触れます。
それは、加入者が負担しなければならないさまざまな手数料です。毎月の積立金には、国民年金基金連合会、運営管理機関(加入先の金融機関)、事務委託先金融機関(信託銀行)への手数料が掛かってきます。通常の投資信託や定期預金にはない手数料です。
私の場合、個々の商品で見るとしっかり利益が出ていて、単純計算すれば7.5%ほどの増益になってもよさそうなものですが、最終的にはトータルで約7%増になっています。iDeCoは「ほったらかして、じっくり増やしましょう」でいきたいのですが、ある意味では、積立期間が長い方ほど「もったいない」ともいえるのがiDeCoの仕組みなのです。この「もったいない」を、国には改善していただきたいものです。
(次回は1月8日を予定しています)