株式と債券を組み合わせたバランス投資が投資効率を上げる

日本・先進国・新興国のそれぞれの株式と債券と組み合わせると、シャープレシオが高くなったことが分かります。

教科書(=投資に教科書があるか否かは別にして)通りの理解でしたら、「株式と債券は『相性の合わない』のがベストな組み合わせ」と、過去の稿(第10回)で述べたことが、上の表にても裏付けられています。

シャープレシオが高くなる、つまり分散投資の効果と言えますね。

が、繰り返しになりますが、上の表は過去の実績にすぎません。そして、令和の今、過去の実績にはないことが、現在進行形で起きています。

例えば、日本のマイナス金利は2016年12月から始まっています。
上の表は2000年12月から2020年12月までの20年間です。ですので、マイナス金利は直近の4年ほどということになり、残りの期間はプラス金利の時代です。

また欧州、ユーロ圏やスイスなどでマイナス金利が導入されたのは2014年のことでした。やはり、マイナス金利の期間の方が短いです。

マイナス金利に加えて、新型コロナウイルス禍という過去にないことが起きていて、今後もしばらく続きそうです。

マイナス金利
マイナス金利という異例の金融政策が、欧州ではすでに6年以上続いている

これからも債券に投資するメリットがあるのか?

そもそも債券については、同じく連載第6回にて「債券を発行した企業や国などにとっては『借りたお金に利子を付けて返す』だけに過ぎず、そこには成長がありません」と書きました。
債券にも価格変動があり、キャピタルゲイン(値上がり益)を得ることができますが、債券価格の変動の原因は金利です。そして、債券投資の大きな魅力は(デフォルトなどの特別な事情がなければ)必ず得ることができる金利です。その金利がマイナスになってしまっているのです。

債券は、プラス金利の時代と変わることなく、これからも分散投資の効果を高め、シャープレシオを高めてくれるのでしょうか?

債券への分散投資の賛否については、筆者もまだ結論を得ていませんが、最近では、債券の代替の投資先として、金(ゴールド)への投資配分を高めています。金への投資については連載第27回をご覧ください。

ところで、先ほどの表の下段にある、日本債券だけの単独の資産配分を見ると、全体で最も高いシャープレシオ(0.89)になっています。しかし、リターンとリスクも最も低くなっています。
日本債券はローリスクローリターン、つまり大きく増えもしなければ、大きなマイナスもない、ということです。

過去の実績を見ても、これからも続くであろうマイナス金利を踏まえると、日本債券100%という投資配分に基づいた投資はなさそうです。

まとめに代えて……未知の未来への長期分散の投資に「日本株」の選択肢はなし?

さて、新型コロナウイルス感染症ですが、二度目の緊急事態宣言が発令されつつも、1度目のそれとは異なり、大きな制約がなければ、経済的な支援も限定的なものです。廃業を余儀なくされる規模の小さな企業が増えてしまいそうですが、雇用の維持という課題は、企業の規模に関係なさそうです。

企業を支えるのは家計です。家計は、企業を「労働」と「消費」という2つの側面から支えている旨は、過去の稿(第5回)で述べている通りです。その労働が、今、失われつつあるのです。

もともと人口減少に歯止めがかからず、企業を支える家計が減りつつあったのに、新型コロナウイルス感染症によって、「労働が減る」ことに拍車を掛けてしまった感があります。

短期的にリターンを目指す投資ならともかく、過去を踏まえても、新型コロナウイルス感染症の今を見ても、「未知の未来への長期投資」では、日本株という選択肢はどうやら消去することになりそうです。