「少額から始められ、非課税で運用できて、いいことばかり!」──。つみたてNISAはそんなふうに思われがちですが、特有の知っておきたいリスクもあります。例えば、価格上昇が長期的に続くと、積立投資のメリットが発揮されにくくなることをご存知ですか? 意外と知られていない、つみたてNISAのリスクについて考えます。
- 投資家デビューにぴったりのつみたてNISA。でも積立投資は万能な手法ではない
- 下落相場を経験してこそ積立投資の効果を発揮できる
- 2020年に投資家デビューした人は、まだ本格的な下落相場を経験していない
つみたてNISA(積立投資)のメリット
つみたてNISAは少額からでも投資を始められる点がメリットの一つです。個別株を購入するにはまとまったお金が必要な場合がありますが、つみたてNISAの対象になっている金融商品は、投資信託やETF(上場投資信託)です(ETFの仕組みについてはこちらから)。
投資信託やETFは、まとまった資金がなくても投資できるだけでなく、幅広い投資対象に分散投資する仕組みなので、少額でもさまざまな資産に分散投資が可能です。つまり投資信託やETFを投資対象とするつみたてNISAは、初心者でも始めやすい制度といえるでしょう。
さらにつみたてNISAなら、毎月無理のない金額で投資していくため、気付いた頃にはまとまった資産に成長しているというメリットもあります。積立投資の場合は、小さな価格変動を気にしてもあまり意味がないため、一度積立設定したら珠なく機械的に投資を継続できる点も魅力です。
意外と知らない、積立投資のリスク
つみたてNISAは、少額の投資を長期間続けることで、じっくりと資産を形成するシステムです。少額投資であり、初心者に優しい設計であることから、リスクが少ない仕組みと思われがちですが、意外と知られていない落とし穴もあります。
積立投資が効果的であることの説明として、「ドルコスト平均法」という理論が使われることをご存知でしょうか。これは毎月決まった金額で買い付けるため、価格が高いときには少し買い、価格が安いときにたくさん買うことになり、価格が高い時に一度に購入してしまうリスクを下げながら、結果的に平均購入単価を引き下げるという理屈です。
ドルコスト平均法は確かに一定の意味がある投資方法ですが、それはあくまでも下落相場で安く買えるタイミングがあってのこと。上昇相場ばかりが続くと、平均購入単価は切り上がる一方なので、せっかくの「安くたくさん買う」という場面に出会えない可能性があるわけです。
さらに、上昇相場がずっと続いていたものが、一転して下落相場になるとそれまで積み立ててきた含み益が一気に減ってしまう可能性もあります。つまり、ドルコスト平均法が力を発揮するのは、下落相場が継続してから反転する相場や、価格が上がったり下がったり変動しながら成長しているときに限られるのです。
「積立投資=低リスク」というのは一面的な見方で、万能な投資方法ではないことをよく理解することが大切です。
上げ相場だった2020年。今後はどうなる……
2020年初頭はコロナショックに見舞われましたが、その後株価は回復し、上昇基調に乗りました。2020年は株式市場が好調だったこともあり、投資家デビューする人も多かったようです。その後、基本的には上昇相場が続いているため、つみたてNISAだけの投資ビギナーでも資産が増えた人も多かったことでしょう。
ただし、つみたてNISAの場合は平均購入単価が重要です。上昇相場だけしか経験していない投資家は、もしかしたら平均購入単価がずっと切り上がっている可能性があるかもしれません。
積立投資でもっとも大切なのは「続けること」
しばらく好調が続いている株式市場ですが、今後大きな調整局面を迎える可能性が決してないわけではありません。2020年につみたてNISAで投資家デビューした方をはじめ、これまで上昇相場しか経験していない投資家にとっては、運用成果が大きく値下がりする辛い局面もきっとこれから経験することになるでしょう。
しかし、価格下落局面こそ、安くたくさん仕込んで平均購入単価を下げるチャンスです! あわてて解約するとただ損をして終わってしまうだけ。つみたてNISAのメリットを生かすためは、ぜひグッと我慢して、積み立てを続けてほしいと思います。