豊かな人生とは何をもって言うか、その指標はお金だけでしょうか? ビジネスを成功させた人に聞くと「人に恵まれた」エピソードが必ず語られます。コロナ禍を体験し、先が見えない世の中だからこそ「人と繋がる」ことの大切さが身に沁みます。“人”という字が支え合っているように、人と出会って何を学んでいくかは、人生において大切な自己投資になります。この連載では、専門知識や経験に秀でたスペシャリストの視点で、豊かな生き方の極意を語ってもらいます。第8回のテーマは、「よい組織の作り方」。社労士として企業サポートを手がける井上敦史さんにお話を伺いました。(聞き手=さらだたまこ)

井上敦史さんの写真
井上敦史(いのうえあつし)さん
2001年に社会保険労務士試験合格。人材総合サービスを手掛けるエン・ジャパン株式会社のコンサルティング営業を経て、2010年に社会保険労務士として開業。社員研修に関する助成金を中心に、約20億円のサポート実績がある。 高知県出身で、高校ではラグビー、大学ではアメリカンフットボールで楕円のボールに情熱を捧げた。2021年4月より「社会保険労務士法人さくら労務」の代表社員。

魅力的な組織の中の人とは?

2020年早々に始まったコロナ禍の暑い夏も2度目を迎えました。変異ウイルス「デルタ株」が猛威をふるって、コロナ収束の兆しは遠のいた感があります。それでも、社会は動き、私たちの経済活動も続けていかなれればなりません。

しかしながら、この記事のシリーズで、それぞれのスペシャリストにお話を伺っても、当初予想されていた「コロナ倒産する企業」は意外と少なく、そこには国や自治体の助成金や、銀行などの実質無利子・無担保融資によって、事業活動が継続できているという成果もみられます。

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とはいえ……。
コロナが収束した後も、果たして生き残れるのか?
淘汰されるだけのゾンビ企業にならないためにはどうしたらいいのか?
それは経営者の最大の課題であり、社員にとっては最大の関心事。
そして今、就活中の学生さんには、当然、企業選びの基準になるはず。

企業が人によって運営される組織である以上、その良し悪しも、人を見て判断することになると筆者は考えます。

そこで、今回、お話を聞くスペシャリストは、社会保険労務士の井上敦史さん。
人事・労務管理の側面から企業をサポートしてきた井上さんに、魅力的な組織の中の人とはどんな人なのか? とことん聞いてみました。

井上さんは高校時代、ラガーマンであり、大学時代はアメフトに情熱も時間も捧げた経歴の持ち主。
「特に、アメフトは囲碁や将棋のように頭脳を使う戦略的スポーツなので、培ったチームワークは、ビジネスでも、企業の組織の中を見るにも役立っています」と井上さんはいいます。

これから伺うお話は、就活だけでなく、人間力を判断する基準になるので、友人関係の構築や、あるいは結婚して家庭を築く場合の生涯の伴侶選びにも役立つと思いますよ。

企業理念を就業規則に落とし込むと仕事が見える化する

アフターコロナの時代まで、元気で生き残る企業であるにはなにが必要か?
井上さんが参考になるのは社労士の有志で組織した「100年企業研究会」のメソッドだといいます。
日本にはすぐれた老舗があり、その長い歴史は創業者から代々受け継がれた「企業理念」によって培われてきました。

「ただ、理念というのは、概念であって、抽象的なもの。では実際の事業の中に理念をどういう形で具体的に行っているのか? 『100年企業研究会』ではそれを具体的な就業規則に落とし込んで、『100年就業規則』という形に言語化しています。就業規則なら具体的に何をすればいいか新人社員にもわかりやすいし、なぜ、そんな規則があるのか疑問がもたれても、それは企業理念に裏打ちされたものだとわかれば納得しやすいでしょう?」と井上さん。

実は100年就業規則が生まれた背景には、若い後継者のために先代が社労士と相談しながら経営ノウハウや哲学を言語化し、就業規則の形でまとめたことが発端となっているといいます。

チームワークのイメージ
就業規則も企業理念に裏打ちされたものだとわかれば納得しやすい

しかし、世の中の企業には歴史の浅い企業も多々あります。
「起業したてのベンチャーでは『企業理念』が固まってないケースもあるし、また理念は掲げていても、社員と共有できるまでの言語化ができてない場合もあります。そういう場合は、社長が何か新しい事業を試みる度に社員からは、『社長はワンマンだから』とか『また、社長の気まぐれが始まった』と言われてしまうのです」と井上さん。

確かに理念はある種、「そうなったらいいな」的な理想であると思われるふしもあります。その理想に一歩ずつでも近づいていくために、具体的に何をしていくのか? 小規模の会社なら、社員みんなとひとつひとつ話し合って言語化していくとよいのですね。

筆者は仕事柄、いろいろなコンテンツを作成するためにまず企画書を書くところから始めるのですが、企画主旨はうまく書けても、では実際、その主旨に従って何をどう作っていくのか? 具体的なアイデアが浮かばなければ、面白いコンテンツにはならないのと同じですね。

恋愛や結婚も同じです。「理想に抱く恋愛観・結婚観」を、ふたりはどんな形で描くのか、言語化・明文化できるように話し合ってみることが大切かなと思いました。

言葉で伝える
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