資産形成の効果的な手段として、多くの個人投資家がNISAやつみたてNISAを活用しています。効果を最大化するためには、限度額ぎりぎりまで非課税枠を使いたいところ。でも、投資資金が非課税枠の上限を超えてしまった場合はどうなるの? 本記事では、証券会社によって異なる対応と、上限額に関わるNISAの注意点をまとめました。

  • NISAの非課税枠を超えた分は、買い付け自体できなくなる
  • ただし証券会社によっては、課税口座で買い付けてくれる場合もある
  • ロールオーバーは、評価額ではなく購入額で判断される

証券会社によって対応は異なる

NISAやつみたてNISAは、非課税で運用できるお得な制度ですが、非課税枠の上限はあらかじめ定められています。一般NISAは年間120万円、つみたてNISAは年間40万円です。

ただし、それぞれの非課税投資枠を超える金額を投資したい、または投資してしまった場合、その金額がどうなるかについては、証券会社や金融商品によって対応が異なります。基本的には非課税投資枠を超えると買付自体ができなくなるか、超過分が自動的に課税口座(特定口座や一般口座)での購入になるかのどちらかの対応になることが一般的です。

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課税口座での取引は当然、非課税投資の対象にはなりません。取引から発生した売却益や配当金には通常通り課税されます。

主要な証券会社の対応を表にまとめました。

証券会社 限度額以上の投資資金の対応
楽天証券 買付不可
SBI証券 原則買付不可。投資信託の積立注文では「NISA枠ぎりぎり注文」を指定すれば積立設定金額の一部をNISA口座での注文として買付できる
マネックス証券 買付不可
野村証券 上限額を超過した分は自動的に課税口座(特定口座または一般口座)での買付となる。ただし、非課税枠を使い切れるようにNISA枠内で金額指定注文が可能

買い注文自体を受け付けない証券会社と、超過分は課税口座になる証券会社があるようです。超過分の取り扱い方法については一定のルールがないため、それぞれの証券会社の判断に任されています

超過しているのにもかかわらず、うっかり買い注文を出すと、課税口座で購入してしまっている場合もあるかもしれません。自分がNISA口座を開設している証券会社はどうなっているか事前に確認しておきましょう。

投資可能額の注意点

NISAを活用している個人投資家が非課税投資枠について判断に迷うポイントとして、「購入額」と「評価額」のどちらを基準にするのかという問題があります。例えば、一般NISAを使って100万円分の投資を行ったところ、年内に値上がりして140万円になったとしましょう。この場合、もう年内は一般NISAを使った投資はできないのでしょうか?

その答えとしては、非課税投資枠は「購入額」で判断されるため、その年はまだ残り20万円分の非課税投資が可能です。この考え方はつみたてNISAも同様なので、非課税投資枠において値上がり分を考える必要はありません。

もうひとつ注意しておきたい点が、ロールオーバーの際の非課税投資枠の取り扱いです。ロールオーバーとは、一般NISAにおいて5年間の非課税期間が終了した資産を翌年(6年目)の非課税投資枠に移して、さらに最長5年間の非課税運用を継続することを指します。

非課税期間が終了すると、ロールオーバーするか、売却するか、課税口座に移すかという3つの選択肢から選ぶことになります。このときロールオーバーを選ぶと、翌年の非課税枠を消費してしまうことになります。

NISAのロールオーバーのイメージ
非課税期間が終了した一般NISA。その後の選択肢は、「売却」「課税口座に移す」「ロールオーバー」の3つ

例えば、2017年に100万円で投資した投資信託が2021年の非課税期間終了時に50万円になっていたとします。翌年(2022年)の一般NISAの上限額は、120万円ですから、ロールオーバーしても70万円分の枠が残ります。2022年の一般NISA口座で新規に買付できるのは70万円までとなります。

一方、2017年に100万円で投資した投資信託が2021年の非課税期間終了時に180万円になっていたとしましょう。このように120万円を超えても翌年(2022年)の非課税枠にロールオーバーすることができますが、2022年の一般NISA枠をすべて使い切ったことになり、この年に新たな投資はできないことには注意が必要です。

新NISAはどうなる?

2024年からは現行の一般NISAを大幅改変した新NISAが新たにスタートします。

新NISAは2階建ての構成になっていることがポイントです。まずは1階部分のつみたてNISA商品20万円分の枠を使ってから(全部使い切らなくても、たとえ1,000円だけでも使えばOK)、2階部分の102万円の枠が使えるようになります。ただし、新NISA施行以前から一般NISA口座を持っている人は、最初から2階部分を使い始めることも可能です。

ここで重要なポイントが、一般NISAから新NISAへのロールオーバーは、2階の枠から使う点です。ロールオーバーで2階部分を使い切ってしまうと、1階部分の投資枠しか使えず、購入できる商品がつみたてNISA対象の銘柄だけになってしまいます。
新NISAは少し複雑ですので、下記記事を合わせて読んでいただき、より良い資産形成を実現してください。

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