事業承継からM&Aの決意まで

丸山祥子さんは、90年の歴史を持つ建設会社を営む丸山家の次女として生まれました。「三姉妹で、男の子はいないので、母親からは男性社会の中で対等に生きてゆけるような育て方をされ、子供の頃から私も何らかの形でいずれは家業を継ぐかも、という漠然とした意識はありました」と丸山さんはいいます。

けれども、大学院に進んで勉学に励むなど、20代の頃の丸山さんはすぐに積極的な事業継承に行動を移したわけではなかったのです。

しかし、元気だったお母さまが病に倒れ、入院したことで、「創業家としての責任に目覚めた」という丸山さんは、31歳で家業の「丸山組」に入社します。「母が倒れてうろたえる父を見て、私が母に代わって父を支えなければと思いましたし、父とていつまでも元気で経営を続けられるわけはなく、継がなければという気持ちが背中を押しました」と。

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ファミリービジネスといえども、社員は20余名、社員それぞれに家族がいる。さらに丸山組を頼りにしている下請の存在があって、「全部で200人くらいの生活を丸山組は負っている」ことを実感した丸山さんは、具体的な事業承継の青写真を描くようになります。

そして、35歳でお父様に「1年半後に私が社長になります」と宣言。有言実行して、37歳で社長に就任、お父様は会長に!

女性社長のイメージ
35歳の時、1年半後に社長になることを宣言したという丸山さん。実際に37歳で社長になった ※写真はイメージです

しかし、社長になって1年後、丸山さんはM&Aを決意します。要は親会社をみつけて、株式譲渡を行う形での事業承継です。決断から1年後に、やはり老舗の建設会社に株式を譲渡し、丸山さんはPMI(M&A後の統合プロセス)に携わりながら、2019年秋まで取締役を務めます。

「取締役も退任したので、今はもう、ときおり丸山組に顔を出す見守り役になりました」と、笑顔で語る丸山さん。

社長就任から丸山組を卒業するまで、4年余り。
そのスピーディで潔い決断と実行力は、結果「幸せなM&A」だったと丸山さんは振り返ります。

とはいっても、結論として「幸せ」という言葉が出てくるまでに、丸山さんの4年間は、想像を絶する様々な闘いで埋め尽くされた濃厚すぎる葛藤の日々であったのです。

葛藤のイメージ
社長就任後から4年間、丸山さんの葛藤は続いた ※写真はイメージです

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