「老後2000万円問題」が話題になったように、現役世代にとって老後資金をどう準備すべきかは切実な問題です。実際に老後資金を2000万円を貯めるために、「貯蓄」「投信積立」「保険」「不動産投資」の4つの方法を選んだ場合、毎月どの程度の金額を運用する必要があるのでしょうか。それぞれのメリット・デメリットとともに解説します。

  • 「老後資金2000万円問題」は夫婦2人の年金額が毎月55000円不足する想定
  • 30年間かけて貯蓄で2000万円を準備するなら、毎月55,555円が必要
  • 投信積立、保険、不動産投資といった資産運用はより効率良く準備するための選択肢

老後資金はいくら必要か

老後資金としてどの程度のお金を準備しておけばよいのか。気になる人は多いでしょう。

金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」は、老後を20~30年とすると約1300~2000万円が不足すると試算し、2019年6月に「高齢社会における資産形成・管理」という題名の報告書を公表しました。2000万円という金額にインパクトがあったため、「老後資金2000万円問題とも呼ばれるようになりました

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「老後資金2000万円問題」は、多くの議論を生みました。「本当にそんなに必要なのだろうか」と懐疑的に受け取る人や、「早く2000万円を準備しなくては」と焦る人、「節約すれば何とか老後も暮らせるだろう」と受け流す人など、さまざまな反応が見られています。

「老後資金2000万円問題」は、夫婦2人の年金額が生活費よりも月55000円不足した場合を想定し、30年間なら約2000万円不足するという計算がベースになっています。本当に2000万円不足するとは限りませんが、老後資金として2000万円ほど用意しておくと、ある程度は安心できるかもしれません。

30歳~60歳までの30年間で2000万円を準備するために、「貯蓄」「投信積立」「保険」「不動産投資」の4つの方法について考えていきます。

2000万円を貯める方法① 貯蓄
2000万円を貯める方法② 投信積立
2000万円を貯める方法③ 保険
2000万円を貯める方法④ 不動産投資

トラリピインタビュー

貯蓄で2000万円を貯める場合

お金を貯める方法として、もっともスタンダードともいえるのが貯蓄です。毎月自動的に貯蓄できる口座振替型の定期預金などであれば、ついうっかりお金を預けるのを忘れてしまうことがありません。

ただし、貯蓄はお金を貯める方法であり、お金を増やす方法とはいえない点に注意しましょう。日本では長く超低金利時代が続いており、2023年2月時点では普通預金の利息は年0.001%ほど、定期預金でも年0.002%ほどに設定されていることが多いです。

そのため、2000万円をまとめて預ける場合でも、年間利息は200円ほどにしかなりません。実際には税金が源泉徴収された状態で入金されるので、受け取れる利息は160円を切ります。

このように、ほとんどといってよいほど貯蓄ではお金は増えないため、2000万円を貯めるのであれば、利息は無視して単純に運用月数で割って毎月の貯蓄額を求めましょう。30年であれば2000万円÷360(12ヵ月×30年)ということで、毎月5万5555円の貯蓄が必要となります。

教育資金を貯める必要がある場合や住宅ローンを返済しているときなどは、毎月5万5555円の貯蓄はハードルが高いかもしれません。

なお将来的には、インフレのリスクがある点も考慮しておきましょう。インフレが進むとお金の価値は下がるため、老後に貯まった2000万円は現在の2000万円よりも価値が低くなります。あらゆるモノの値段が上がることになれば、2000万円では老後を乗り切れない可能性も想定されます。

インフレが「貯蓄から投資へ」を後押しする?

投信積立で2000万円を貯める場合

2000万円を360分割して貯める貯蓄は、比較的安心できる方法です。万が一、銀行などが破産した場合でも、普通預金や定期預金は預金保険制度が適用されるため、1000万円の元本とその利息については全額保証されます。2つの金融機関に分けて貯蓄すると確実です。

しかし、金利がきわめて低く、お金がほとんど増えない現状では、貯蓄は効率が悪い貯め方ともいえます。貯蓄よりお金を増やせる可能性のある方法を使って、効率良く老後資金を貯めたいと考える方も多いでしょう。

お金が減ってしまうリスクを抑えながら、増やせる可能性を高める方法として、投信積立を検討できます。投信積立とは、定期預金のように投資信託を定額で買い続ける方法です。投資信託は元本が保証されていませんが、積立投資という方法を使えば、以下のような理由で、お金が減ってしまう可能性を抑えられます。

  • 購入タイミングを分散できる
  • 少額ずつ積み立てられる
  • 投資信託自体が複数の金融商品を組み合わせてできている

投資信託は価格が変動するため、時期によっては割高な価格で購入することになります。しかし、投信積立なら、例えば毎月20日と決めて定額で購入することになるので、割高なときは少しだけ、割安なときは多く購入できるため、いわゆる高値づかみによる損失を避けることができます。積立額を少額に設定しておけば、さらに値動きを抑えたローリスクな投資が可能です。

また、投資信託自体が株式や債券など複数の金融商品を組み合わせたものです。ローリスク投資の基本の1つに「分散」が挙げられますが、投信積立なら購入時期も投資対象も分散することができるのです。

正しい分散、できてますか? 4つの分散投資を解説

投信積立を運用して30年で2000万円を貯める場合の積立額は、利回りによって異なります。投資信託の想定利回りと毎月の積立額の目安は、以下をご覧ください。

想定利回り(年率) 1% 3% 5% 7% 10%
毎月の積立額 4万7661円 3万4321円 2万4031円 1万6394円 8,848円

さらにリスクを下げるために、複数の投信積立を運用する方法があります。価格の動きがあまり似ていない商品を組み合わせておくと、すべての商品が同時に値下がりするリスクを軽減しやすくなります。

まずは目標利回りに合った商品を選びましょう。ただし、想定利回りが高い投資信託ほど、急な値下がりに見舞われる可能性も高くなります。老後が迫ってきたら、想定利回りが低く、値下がりの可能性も低い投資信託の割合を増やすなど、出口戦略も立ててから投信積立を始めましょう。

老後資金を貯めることが目的の長期投資なら、確定拠出年金(iDeCo含む)やつみたてNISAなど、投資の利益が非課税になる制度も活用しましょう。iDeCoは利益が非課税になるだけでなく、掛金(毎月の積立額)が全額所得控除の対象となり、投資以外での節税効果も期待できます。

保険で2000万円を貯める場合

老後資金の貯め方として、保険も検討できます。保険は病気やケガ、災害などの万が一のときに備える商品に加えて、貯蓄性のある商品もあり、老後資金にも活用できることがあります。

なお、貯蓄性のある保険とは、掛け捨てではない保険のことです。満期金や解約返戻金が設定されているので、病気やケガなどがなくてもお金を受け取れることがあります(※)。貯蓄性のある保険をいくつか紹介します。

※満期金や解約返戻金の設定がある保険でも、短期間で解約するときはお金を受け取れないことがあります。

低解約返戻金型終身保険

低解約返戻金型終身保険は、次の特徴を持つ保険です。

  • 保険料払込期間中の解約返戻金が低く設定されている
  • 保険料払込期間が終わると、通常の終身保険と同程度の解約返戻金になる
  • 保険料が低めに設定されている

解約返戻金が低く設定されているため、保険料の払込期間中に解約すると通常の終身保険の7割程度の解約返戻金しか受け取れません。しかし、死亡保険金は通常の終身保険と変わらないため、低い保険料で一生涯の保障を受けられます。

毎月の保険料を低く抑え、死亡時の保障を充実したい方に適した保険です。葬儀費用や相続対策だけでなく、保険料払込期間後に解約して老後資金に活かすこともできます。

メリット デメリット
  • 保険料が低め
  • 満期金や保険料払込期間後の解約返戻金は、通常の終身保険と同程度受け取れる
  • 保険料払込期間中に解約すると、解約返戻金が少ない
  • 保険料払込期間中は保険の見直しがしにくい

人生100年時代に最適。保障を移行できる終身保険

個人年金保険

個人年金保険とは、次の特徴を持つ保険です。

  • 一定期間のみ保険料を支払い、年金や一時金の形で保険金を受け取る
  • 公的年金や企業年金で老後資金が不足するときに検討できる
  • 受け取り方を選択できる

公的年金は国民の義務ですが、個人年金保険は任意の保険です。自分で保険料や保険金を設定できるので、老後資金の準備にも活用しやすいでしょう。

受け取り方には、確定年金と有期年金、終身年金の3つの方法があります。

確定年金とは10年、15年というように受取期間をあらかじめ設定しておく方法です。例えば、60歳で定年退職し、65歳から公的年金を受け取る予定の方であれば、つなぎの収入手段として60歳から65歳までの5年間、個人年金保険を受け取ることができます。

また、有期年金も確定年金と同じく一定期間のみ受け取れますが、確定年金は受取期間中に被保険者が亡くなったときでも相続人が保険金を受け取れるのに対し、有期年金では被保険者が亡くなったときは保険金の支払いが終わってしまいます。

終身年金は受取期間が決まっておらず、被保険者が生きている間はいつまでも受け取れる個人年金保険です。老後のプランに合わせて適切なタイプを選びましょう。

メリット デメリット
  • 保険金の受取時期や受取期間を選択できる
  • 個人年金保険料控除の対象となる
  • 解約返戻金が払込保険料より少なくなることがある
  • 有期年金を選ぶと、受給できる保険金が払込保険料より少なくなることがある

老後に備える個人年金保険の内容と種類

外貨建て保険

外貨建て保険とは、次の特徴を持つ保険です。

  • 外貨で支払い、外貨で運用する
  • 保険料や保険金は為替変動の影響を受ける
  • 高金利の通貨建ての保険を利用すると保険料が安くなる

外貨建て保険とは、アメリカドルやオーストラリアドルなどの外貨で保険料を支払い、外貨で運用する保険です。為替や政策金利の影響を受けます。

メリット デメリット
  • 高金利の通貨建て保険は保険料が低め
  • 円安のタイミングで外貨から円に交換すると予定よりも保険金が増える
  • 円高のタイミングで外貨から円に交換すると、予定よりも保険金が減る
  • 仕組みが複雑

米国の金利が上昇する今、外貨建て保険はアリ?

変額保険

変額保険とは、次の特徴を持つ保険です。

  • 価格変動を伴う投資方法で保険料を運用する
  • 運用成果によって受け取れる保険金が変わる

保険会社の運用成果によって保険金が増減するため、元本割れする可能性もある保険です。運用がうまくいったときは保険金も多くなるため、効率良く増やせる可能性があります。

メリット デメリット
  • 運用成果によっては保険金が増えることもある
  • 景気が良いと運用成果も良くなることがあるので、インフレに対応できる
  • 運用成果によっては保険金が減ることがある
  • 保険金や解約返戻金が払込保険料より少なくなることがある

死亡保障があり、資産を増やせる「変額保険」とは?

不動産投資で2000万円を貯める場合

不動産投資にはいくつか方法がありますが、一般的には賃貸物件を所有して家賃収入を得ることを指します。60歳までにまとまった老後資金を貯める方法というよりは、老後の不労所得を確保する方法として活用できるでしょう。

不動産投資のメリットとしては次のものが挙げられます。

  • 毎月の賃料収入を年金にプラスできる
  • いざというときは売却して現金化できる
  • 保険として活用できる
  • 相続税対策にもなる

不動産投資では、コンスタントに家賃収入を得られます。年金にプラスできるので、公的年金だけでは老後資金に不安がある人の選択肢となります。

また、家賃収入が得られない場合でも、不動産自体を売却すればまとまった資金が得られます。株式や投資信託は価格変動が比較的激しいですが、不動産の価格は安定している傾向にあるため、価値が下がりにくい資産として保有することが可能です。

団体信用生命保険に加入してローンを組み、不動産を購入する場合は、万が一、ローン返済中に死亡あるいは高度障害状態になると、以後の返済が免除されます。また、相続税を計算する際、現金は額面額で計算しますが、収益用不動産の相続税評価額は実際の価値の約半分とされているため、相続税対策にも活用できるでしょう。

メリットが多い一方で、次のデメリットもあります。

  • 空室リスクがある
  • 家賃下落リスクがある
  • 金利上昇のリスク

空室が多いと予想していた家賃収入を得られません。物件が古くなって家賃の値下げが必要になったときも、予想よりも家賃収入が減ってしまいます。また、変動金利型のローンを利用している場合、金利上昇により返済負担が増える可能性があります。

これらのリスクを軽減するためにも、物件や業者は複数検討しましょう。また、資金繰りを計画的に行うことも不動産投資を成功させるポイントです。

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