宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回も、「使えるお金が減っている」と嘆く男性会社員を対象にしたお話。テーマは副収入と確定申告です。どのようにして「使えるお金」を増やしていけばいいのでしょうか?

  • 終身雇用は昔の話。これからは副収入でお金を増やすことを考えたい
  • 副収入の種類によって課税もさまざま。株式などの譲渡所得は損益通算などができる
  • 不動産所得では「使えるお金」を増やすために、減価償却費などの「経費」を活用

副収入で「お金」と「生きがい」を得る

【質問】
毎年じゃけど、新年度になるたびに給与明細を見るのが怖くなります。使えるお金が減っている気がするわ。お昼はワンコインで済ましています。お金が減ってると思うのは僕の錯覚なんでしょうか?

さあ~、今回はいよいよ給与所得者の「使えるお金」を増やすお話の“完結編”です。

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前回までは、とりあえず給与からの手取り額を取り戻すこと(=控除を作る)を念頭に、税金を取り戻すしかないことを話していきました。

サラリーマンが「残せるお金」を増やす2つの控除

「給料の中で使えるお金」をiDeCoで増やす

所得税は、給与が上がれば税金も上がる「累進課税」です。そして、住民税は前年の所得に対して一律10%がかかります。「累進課税」とはいっても、一般的なサラリーマンが、収入の半分も税金を納めることはあり得ません。それでも、お金を稼がないと、税金や社会保障費の増額や物価上昇のため減少していく一方の「使えるお金」は守れません。やっぱり「使えるお金」を増やさないと、働きがいを見出すことができないのもわかります。

そもそも論として、会社のために定年まで働く終身雇用は昭和時代の幻想であり、現在のようにいろいろな働き方がある時代では、終身雇用はナンセンスと言えます。これからは、稼ぐお金を増やしながら、「使えるお金」も増やして、働きがいも見つけることができれば最高でしょう。収入が増えて、手取りも増え、税金も払えれば一石二鳥です。

せっかく確定申告で税金を還付(取り戻す)していくのですから、確定申告が必要な給与を2か所以上から受けて、収入を増やす手立てを作っていくのが得策ではないかと考えます。副収入で将来の生きがいを見つけながら、「残せるお金」を増やせれば素晴らしいことです。

トラリピインタビュー

副収入にまつわる確定申告の仕組み

そこで今回は、副収入で確定申告をしていくメリット・デメリットを考察していきます。

副収入については、課税方法が所得の種類によって分類されますので理解が必要になります。分類には10種類あります。

①事業所得(営業等・農業)
②不動産所得
③利子所得
④配当所得
⑤給与所得
⑥雑所得(公的年金、業務、その他)
⑦譲渡所得
⑧一時所得
⑨山林所得
⑩退職所得

課税方法にも、以下の種類があります。

総合課税:他の所得と合算して税金を計算
申告分離課税:他の所得と分離して税金を計算
源泉分離課税:他の所得とは関係なく、所得を受け取るときに一定の税額が源泉徴収され、それで全ての納税が完結。確定申告はできません

ここからは、所得合算の総合課税を中心に話していきます。と言いますのは、上記分類の多くは総合課税が適用されるのと、サラリーマンなどは給与所得がメインで源泉徴収されているケースが多いからです。確定申告で税金を計算したうえ、状況によって追徴課税、あるいは還付が発生します。所得の種類によっては経費なども認められるので、所得金額を抑えることもできます。

投資にも関わる利子所得・配当所得・譲渡所得

③利子所得は、上場企業などの配当などについては、総合課税を選択することはできないなどの制約があります。④配当所得は、総合課税に代えて申告分離課税を選ぶこともできますが、その場合は配当控除は受けられませんので注意が必要です。

⑦譲渡所得でよく聞くのは、株式投資をやられている方です。譲渡所得とは、土地や建物、借地権、株式などを譲渡したことによる所得のことですが、株で損した場合は利益と損失を相殺できる「損益通算」と、株の損失を3年間繰り越してその間の利益と相殺できる「繰越控除」制度があります。損益通算とは、株を売却して損を確定させた場合、その年の配当金があれば相殺できます。

仮に譲渡損失が30万円で配当が10万円だと、年間20万円の損失となります。配当金には税率20.315%の20,315円が源泉徴収されているので、確定申告をすると10万円の利益が相殺され、20,315円が還付されます。今はNISAも普及していることから、③④の申告時にはどうすれば得するのか? 考えてみましょう。

不動産所得で「使えるお金」を増やすポイントは「経費」

総合課税の代表格に②不動産所得があります。「アパート経営」の、俗に言う大家さんになりましょう。ですが、確定申告にあたり、不動産所得用の決算書を提出する義務が発生します。中には、賃貸物件を持っているのに申告していない人もいます。地方ほど多く見受けられますが、不動産は空き家問題など問題が山積していることもあるので、速やかに申告しておいた方が良いと思われます。

アパート経営、確定申告は正直に。青色申告で節税を

不動産所得では、経費としていろいろな費目が認められていますが、その中でも大きなものが3つあります。「減価償却費」「借入金利子」「支払手数料」です。

減価償却とは、取得にかかった費用の全額をその年の費用とせず、耐用年数に応じて配分して、その年に費用を計上することです。木造住宅の耐用年数は20年、鉄筋コンクリート造りは47年です。新築マンションであれば、47年間償却で経費とすることができ、その効果は大きいものになります。

賃貸住宅
不動産経営では「減価償却費」の硬貨が大きい

借入金利子は、物件の購入にかかる利子の1年間分を経費とするものです。支払手数料とは、賃貸物件の管理にかかる費用が発生すれば、経費として認められます。これもばかになりません。最後に賃貸料から経費と控除を引いて不動産所得が決まり、それを給与所得と合算して、総合課税の合計金額になります。お気付きだと思いますが、不動産所得と経費の扱いによっては、「使えるお金」が増える可能性が高まるのは明らかです。面倒な税務手続きはありますが、資産として建物、土地は残ります。

結論として、副収入は累進課税にも負けない「使えるお金」を増やす方法であり、さらには「使える資産」までを手にすることも可能です。ぜひご参考にしてください。

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