宮崎県延岡市で保険業や資産運用のアドバイスに携わる小田初光さんが、地方で暮らす生活者のリアルな視点で、お金に関するさまざまな疑問に答えます。今回のテーマは「変額保険」。リスクを伴う投資商品でもある変額保険に対して、そのリスクや注意点が正しく説明されず、トラブルが発生する場合もあるようです。変額保険を選ぶ際の注意点について解説します。
- 変額保険は養老保険と異なり運用の成果で保険金が変動し、元本割れのリスクがある
- 変額保険のリスクについて、保険外交員の説明が足りずトラブルになることも多い
- 検討が必要な項目は資産配分のリスクや有期・終身の違い、保険料の支払い回数など
変額保険のメリットとリスク
【質問】
今、掛け捨て生命保険に入ってるっちゃけど、どうも満期がある積立保険があるらしく、昔入っていたこともある積立保険がまた始まったかと思って、今度話を聞いて、よかったら入ろうと思います。金利も徐々に上がっているので期待していますが、そんな旨い話はあるのでしょうか?
その通り、旨い話はありません。それはたぶん「変額保険」という商品だと思われます。
50代の相談者が以前加入していたのは「養老保険」といわれるもので、死亡保険と満期保険金が同額の、貯蓄型の生命保険ではないでしょうか。
現在の低金利では、死亡保険と貯蓄を両立させることができず、また養老保険は商品も少ないことがあり、保険の外務員の方は他の商品である変額保険を勧めることが増えているのです。
注意が必要なのは、変額保険には金利はないことです。金利ではなく、運用の成果として利回りがついてきます。そして、基本的に元本保証ではなく、元本割れのリスクがあります。確かに変額保険は、保険料も同じ条件の養老保険と比較して安く、株式などで運用することによりインフレにも対応できます。今は日本政府の資産運用立国を目指す政策(貯蓄から投資へ)のもと、NISAなどの資産運用に皆がチャレンジする時代へと変化していることもあり、外交員もひっちゃきとなって、運用によってお金を増やすタイプの変額保険の営業に走っています。
変額保険の内容は以前の第81回、82回で特集を組んでいますので参考にしていただければと思いますが、今日一般的な保険商品と比べると、変額保険は保険内容の仕組みなど複雑でわかりにくいことから、苦情やトラブルが多く発生しています。
変額保険には独特なリスクが存在することから、外務員は募集する際に、保険業法にのっとって被保険者の適合性の確認をしなければなりません。これが見過ごされて問題となっているのです。ただし、変額保険は外務員が説明責任を果たすだけでは問題解決に至らないのも現実です。「こんなはずじゃなかったのに?」という後の祭りにならないためにも良く考えて加入をするべきです。
変額保険を選ぶ際に押さえたい注意点
今回は変額保険に加入する際に、必ず押さえておきたい要点を、外交員との問答の形式で3つにまとめてみました。
変額保険には満期がある有期型と、保証が一生涯続く終身型がありますが、今回は養老保険との比較をしますので、主に有期型で見ていきます。有期型は終身型と比較しても加入時の不注意がリスク増大につながりますので、特に気をつけなければいけません。
iDeCo(個人型確定拠出年金)をやられている方はおわかりでしょうが、変額保険とiDeCoは保険か年金かの違いはあるものの、両者とも複数の投資商品で運用することには変わりなく、場合によってはハイリスク商品とも言えます。また、変額保険のコストは定額保険に比べると高いのが一般的です。
さらに定額保険の大きな違いとして、一般的な定額保険の保険料は「一般勘定」で運用され、その運用リスクは生命保険会社が負いますが、変額保険の場合は「特別勘定」で運用されることが挙げられます。特別勘定の運用に対するリスクは、保険契約者自身で負わなければなりません。「自己責任」が、明確に提示されています。その点が契約者に理解されていないと、契約後の苦情につながる可能性があります。外交員にすれば、変額保険は一般的な生命保険という感覚より、投資商品だと思って話をしなければいけません。
外交員は自分のペースで話をすることが多いので、主に相談者側から質問をしながら、大丈夫かどうかを見極めていくよう話をするといいでしょう。それでは問答に移っていきます。
問答① 変額保険の資産配分のリスク
相談者「リスクがあると言いましたが、具体的に説明してください」
外交員「そうですねぇ、リスクについてはパンフレットに載せていますので見てください。わかると思います」
これはさすがにまずい回答ですね。リスクがわからないから聞いているのに、パンフレットを見てくださいではたまりません。外交員の無知と不誠実さがわかります。
変額保険のリスクは、基本は投資信託に投資するのと同じリスクですが、複数商品でのアセットアロケーション(組み合わせ)になるので、メンテナンスも必要です。単体の商品でない分、運用によって商品の配分が変わることで思いがけないリスクが増える可能性があるなど、積立しっぱなしではまずいことを言わないといけません。
模範解答「お客さまが自己責任の元、複数の商品を決めて運用する必要がありますね。でもご安心ください。商品選定については参考になるものもありますし、ご相談に乗ることはできますよ」
問答② 有期型の変額保険の満期に関するリスク
相談者「満期があると言いましたが、保険なので一生涯(終身)がいいんじゃないですか?」
外交員「逆に満期が決まっているので安心感もありますよね。積み立てと割り切ればいいですよ」
養老保険などのリスクが低い商品であればともかく、変額保険のようなリスクがある商品は、投資信託が中心の運用となります。投資の基本は長期・積み立て・分散に変わりありません。このことからすると、相談者は50代なので、長期運用には限りがあります。景気の波もありますし、満期がある商品だと景気の底に満期が来て、運用が失敗に終わることも考えられます。できれば終身にして、解約できるタイミングを計れるようにするといいかもしれません。
模範解答「そうですねぇ、お客様の年齢を考えると長期運用はギリギリかもしれません。加入して10年未満で解約したり減額したりするとペナルティがかかってきますので、ご注意も必要です。でも報告書を確認しながらスイッチングなどすることで、運用のリスクは軽減できます」
問答③ 変額保険で年払いを選ぶリスク
相談者「前に保険料を安くするために年払いにしていたんですが、変額保険もできますか?」
外交員「もちろん保険料は安くなりますから、そうしましょう」
この回答も普通に見えますが、ひどい回答だと思います。確かに保険料は年払い、半年払いにすると月払いよりは安いですが、逆に考えると、一年間に一度だけの特別勘定として、そのタイミングでの投資信託の基準価額で買うことになります。高値で買うことになれば、運用効率は落ちてしまいます。
それより、毎月12回に分けて買い付けしていった方が、はるかにリスクは軽減されます。保険料が少し安くなるだけの年払いを選んだために、高値づかみをして大損をしてしまうこともあり得るので、このような回答をする外交員は信用できません。
模範解答「確かに保険料は少し安くなりますが、投資商品は一年に一回まとめて買うよりも、毎月地道に買っていった方がリスクは少なくなり、安心できますよ」
どうでしょうか、ここまで3通りの問答法を説明してきましたが、やっぱり最後は外交員の質になってきます。
自身でお金の運用を行っている、資産運用に特化した外交員の方なら、いろいろと吸収できる知識もあります。外交員は誠実さが絶対必要です。