「家族の幸せが自分の幸せ」なんて耳当たりのいい言葉を美談界隈でよく見かけますが、本当のところは「自分の幸せがあるから家族も幸せにできる」のかもしれません。アーティストとして、二児の母として日々邁進するNature Artist ~Rin~さんに、大病の経験から得た考え方や、自己実現の大切さなどを聞きました。(聞き手・文=南野胡茶)

Rinさん

Rinさん
千葉県出身。自然を愛し、目に見えないものの美しさ、透明感のある癒しと優しさの世界を表現するアーティスト。二児の母。国内だけでなく、フランスやアラブ首長国連邦など国内外の個展や展示会などにも多数参加。イベントやライブペイント、壁画制作など精力的に活動。
Instagram:@rinart.painter Facebook:@rinart.painter HP:http://rinartist.com/

気持ちが満たされると優しくなれる

これまでに多くの作品を出展され、複数の賞も獲得されています。アーティスト活動をスタートされた時期と、作品のテーマを教えてください。

Rinさん 2012年からです。今はアクリル絵画を中心に制作していますが、絵を描きはじめた2012年頃はパステル画から取り組みました。「希望の光と癒し」をテーマに、キャンバス以外にも自動車や動物の骨など枠に囚われない世界感の作品を制作しています。

鹿の骨アート
動物の骨を再利用したアート作品

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2児の母であり、アーティスト活動の合間にパートもこなしているRinさん。幼いころからアーティストを志していたのでしょうか?

Rinさん 実は、絵に対しては少し苦手意識を持っていました。両親から「幼少期はお絵かきをずっとしているような子どもだった」と聞きましたが、自分では覚えていません。将来は海外に行きたいと思っていたので英語科の学校へ進学し、貿易関係の職場で営業事務の仕事を9年ほどしていました。結婚後、第一子の妊娠を機に退職し、専業主婦になりました。

2002年に一人目を、2006年に二人目を出産したのですが、夫は仕事が多忙で帰宅が遅く、必然的にワンオペ育児状態になっていきました。子どもたちは可愛いのですが、朝から晩まで育児と家事に追われる日々に、悩みや不満を抱え込むように。

子どもが幼稚園に通いだすと、専業主婦であれば日中一人の時間を持てるようになるので、ママ友とランチに行ったり、パートをしたりする方が増えてきます。私の場合は2時頃に子どもが帰宅するのでパートに出るには時間が足りませんでした。しかし、息抜きがしたい気持ちは日に日に募っていきます。
そんな時、ママ友からトールペイント(家具や陶器、布などに絵具で描く手芸)の自宅教室に誘われました。トールペイント教室では、他の参加者と話すことが気晴らしになり、さらに作品を完成させた達成感も得られました。自分の気持ちが満たされた状態で帰宅したら、家族に対していつもより優しく接することができたのです。

100円の情報誌が夢への第一歩

Rinさん この体験から、「自分も自宅教室を開きたい」と思い始めるようになりました。自宅教室なら子どもたちの予定に合わせてスケジュールが組めるし、息抜きの場を誰かに提供することができるかもしれない……。そんな思いを実現するきっかけとなったのは、たまたま立ち寄った本屋で見かけた、100円の習い事や資格スクール月刊情報誌です。

家事育児に追われてストレスが溜まっていたときに、夫の発言に対して「なぜこの人はこんなことを言うのだろう?」という疑問を持つことがあり心理学に興味を持っていた私は、数ある資格講座の中から心理学を取り入れたフラワーアレンジメント講座のページに惹かれました。しかし、フラワーライフセラピストと花育士の資格取得講座は合わせて約15万円。専業主婦の私には、とても自力で用意できる金額ではありません。
数日間は、本当にやりたいことなのかと自問自答を繰り返し、どうしてもやってみたいと思えたので、ダメもとで夫へ相談したところ、「趣味なら」と承諾してくれたのです。今でも本当に感謝しています。

ダメ元でも行動に移すことがすべて

理解のある旦那様、素敵です。Rinさんのアーティスト活動は、最初はお花からはじまったのですね。

Rinさん はい、お花からです。久しぶりに心から打ち込めることに出会え、嬉しくて楽しくて幸せでした。お花は癒されますしね。一方で、お花の作品は半永久的に枯れることのない「プリザーブドフラワー」だったので、数が増えていくに伴い、場所を取らないもので、ほかに熱中できるものはないかと探すことが増えていきました。インターネットでパステル画を掲載するブログを見つけて、「絵だったら額の中の絵を変えればいいし、壁に飾るから場所を取らない」と思い、その場でパステル画の体験講座に申し込みました。
やってみるとまぁ楽しくて、パステル和(なごみ)アートインストラクター資格取得講座(約5万円)を受講することに決めました。こちらは自分が貯めたお小遣いで支払いました。お花の資格取得とパステル画の資格取得は立て続けに2~3カ月で取りましたね。

資格取得後、なにか変化はありましたか?

Rinさん お花の資格を取得する際、夫からは「趣味なら」と言われましたが、せっかく資格を持っているなら当初の目的通り教室をやりたいと思い、とりあえず名刺を作って普段から持ち歩くようにしました。手芸店に買い物に行った際、色々なハンドメイド講座が開催されている張り紙を見かけて、スタッフの方にダメもとで名刺を渡してみました。すると、「ちょうど講師を探していたところなので、今度作品を持ってきてください」と言われ、お花とパステル画の作品を持っていったところ、講座を始めることが決まったのです。

お花作品

ダメもとでも動くことって大事なんですね。

Rinさん そうですね。駆け出しで何の経歴もない私を受け入れてくださった手芸店の店長さんには感謝の気持ちしかありません。
また同時期に、お花の資格を一緒に受講した方がたまたまイベント主催者で、この方にお声がけいただいたことを起点に、多数のイベントに出展することになりました。イベントで知り合ったお花の講師と私の3人で「花育」講座を月に一度、1年間開催していたこともあります。また、私は夢だった自宅教室だけでなく、2014年から東洋学園大学のパステル画公開講座を務めるまでになりました。

大学の公開講座の講師まで! この間、確かパートもされていたとか……。

Rinさん はい、多い時は週4~5日はパートに出ていました。お花と絵の講師を両方しつつ、家事育児やパートをこなすのはなかなか大変で、徐々に限界を感じていた頃です。お花と絵がどちらも中途半端になってしまうなら、1つに絞ったほうがいいのではないか悩んでいました。お花の場合、スペースの問題だけでなく、材料在庫を抱えがちで、講座の受講料と仕入れの収支のバランスが難しいことも懸念でした。次第に、絵に専念したいと思うようになります。

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