日本の金融市場だけが6営業日連続で閉鎖

寺本名保美
寺本名保美
トータルアセットデザイン
代表取締役

米中貿易協議※1・日米通商交渉※2・英国のEU離脱※3の魔の三点セットが、どれも結論が5月以降に先延ばしされる気配が濃厚となっています。3月末が決算期である日本にとっては3月危機が回避されたことは、とりあえず喜ばしいことではあるはずなのですが、今回については先送りされたその先にある世界の金融市場に類のない「10連休」という難題が待ち構えています。

4月27日から5月6日までの10連休という表現をもう少し正確に表現すると、
「土・日・祝日・飛び石の祝日・祝日・飛び石の祝日・祝日・土・日・振替祝日」
となります。この中で土日は他国市場も休場なので、それを除くと4月29日から5月3日までの5日間と、5月6日の一日の計6日間が、日本の金融取引市場が独自に休場となる期間となります。世界の金融取引において日本の金融市場だけが6営業日連続で閉鎖していることになるのです。

中国には旧正月という祝日があり、この時期は中国の金融市場が休場します※4。毎年この季節になると、世界が動いているなかで何を呑気に休んでいるのかと思っていましたが、それでもたった3日間のことです。今回の日本は1週間丸々休んでもまだ一日開かない。
取引所が休場でもネット証券なら売買できそうに思うのは気のせいで、そもそもバンクホリディ、つまり銀行がお休みなので資金決済ができず、あらゆる金融取引は自動的に停止します。グローバルに動く外国為替市場であっても、日本での値決めを行う短資会社も休みなので、円に絡んだ為替取引も実質的にはお休みになります。


10連休は取引所も金融機関もすべて休業する。日本の金融市場が過去に年末年始以外で6連休となった例はなく、世界の金融取引に与える影響は正確に予測できない

この6連休は、日本の投資家や日本に関わる銘柄の取引が出来ずに不便であるということだけでなく、世界の金融取引全般に少なからず影響を与えることになります。
世界の主要市場における日本の取引所が占める売買シェアは、米国・中国に次いで世界第3位の規模があります。特に昨今では日本市場における先物※5の売買量が急増しており、米国の取引時間終了後や、欧州時間の開始前にでたニュースを受けたポジション調整売買を行う先として、日本市場は世界の投資家から有効に活用されているのです。
例えば2016年6月の英国でのEU離脱を巡る国民投票の結果は東京時間の午前に判明し、また同年11月のトランプ大統領当選は日本時間の13時過ぎに確定したため、東京市場の株式や為替は思惑と結果を受けて乱高下をしました。また直近では昨年の12月25日の欧米市場がクリスマス休暇の最中に米中問題が深刻化したことを受け、東京市場で大量の先物売りがでたことは記憶に新しいでしょう。米国時間と欧州時間の狭間を埋める時間帯に存在する、日本という巨大な取引市場が6日間機能しないことが、世界の投資家に与える心理的な負担は小さくはないのです。

世界市場を動かすイベントが起きやすい時期

毎年5月の連休を挟んだ前後という時期は、市場の方向性を変える大きなイベントが発生しやすい傾向があります。

2015年は連休中に中国の株式市場が急落し、2016年は急激な円高、2017年はフランスの大統領選後のユーロ高、そして2018年は米中の貿易制裁の激化と、いずれもその後の1年を占うようなイベントが不思議と起きるのがこの時期です。10連休がなかったとしても、5月1日のFOMC※6や米中貿易協議の期限など、5月前半は投資家にとってリスク判断が難しい局面を迎えます。
何が起きても対処することができない日本の投資家や日本に対する投資については、買いであろうが売りであろうが4月末までに一旦ポジションを縮小せざるを得ないでしょう。

10連休、海外旅行が人気だそうです。何も憂うことなく連休を満喫したければ、早めに余分なリスクを削ぎ落とし、心身ともに身軽になることをお勧めします。

※1 米中貿易協議
米国のトランプ大統領が対中国の貿易赤字の大きさを問題視し、2018年に米国が中国製品に高い関税をかけたことから「米中貿易戦争」が始まった。これ以上の貿易摩擦の悪化を避けるべく米中は協議を重ねているが、互いになかなか妥協点を見いだせずにいる。

※2 日米通商交渉
2018年9月の日米首脳会談で合意した通商交渉。米国にとっては対日貿易赤字を減らすための交渉となる。当初は1月から始まる予定だったが、米国の政府機関の閉鎖や米中貿易協議の長期化などの影響で、交渉開始は早くても4月になる見込み。

※3 英国のEU離脱
2016年に英国内の国民投票によって決定。「ブレグジット」とも呼ばれる。2019年3月に離脱することが決まっていたが、離脱の条件などについて現時点でも議会の合意が得られず、離脱時期の延期、あるいは離脱そのものを撤回する可能性も含めた議論が続いている。

※4 旧正月
春節ともいう。毎年1月下旬から2月下旬にあり(太陰暦に基づくため、日付は毎年異なる)、中国の株式市場は旧正月の翌日以降3日間休場するのが通例。2019年は2月4日が旧正月で、5~7日が休場となった。

※5 先物
未来のある時点において、ある商品をある価格で「買う」または「売る」約束をするという取引。金融市場では株価指数も先物取引の対象となっており、米国株式市場が開いていない時間帯でも、東京市場ではNYダウ先物などを取引できる。

※6 FOMC
米連邦公開市場委員会。米国の金融政策を決定する場。政策金利もここで決まるので、FOMCの動向は為替や株価に大きな影響を与える。