「預金なら安心」って本当なの? 「元本保証」って、実際に何を保障してくれるの? 実は、現金にもリスクが潜んでいるのです。本連載ではそんな「現金のリスク」を切り口に、お金のほんとうの価値を守るための資産運用について考えていきます。今回からは、ライフスタイルやライフプランニングと投資との関係について考えたいと思います。
- 4つの「偏らない投資」は、投資の世界では「分散投資」といわれている
- 投資の目的は、お金の価値を維持することか、お金を増やすことか?
- ライフスタイルやライフプランニングによって投資のやり方は異なる
4つの「偏らない投資」をおさらい
拙稿をご笑覧くださいまして、ありがとうございます。
連載7回目以後、「偏らない投資」について述べてきました。僭越ではございますが、ここであらためて「偏らない投資」についておさらいをさせていただきたいと思います。
「偏らない投資」は、「お金の価値を維持する」ことを目的とした投資です。
「偏らない」には4つありました。
簡単ではありますが、一つひとつ見ていくことにしましょう。
特定の国に偏らない
8回目では、「特定の国に偏らない」投資ということで、冒頭、筆者の「偏った食生活」から始まり、「日本食以外のお食事」もおススメしつつ、日本以外の国の成長力にも目を向けましょう、というお話を書きました。
イケイケで成長している新興国や、安定とともにゆるやかに成長する先進国などにバランス良く投資をしましょう、という内容です。
特定の業種・業界に偏らない
9回目では、「特定の業種・業界に偏らない」投資について述べました。
AIや宇宙など、特定のテーマを掲げた投資商品(=投資信託・ファンド)は、夢や希望が詰め込まれたようなイメージがあり、とても取り組みやすくはあるのですが。投資のご経験が少ない方には、特定のテーマに特化した投資商品よりも、バランス良い投資商品がおすすめ、ということを書きました。
投資の対象が偏らない
10回目では、成長アクセルとしての株式だけではなく、ブレーキの役割を担っている債券への投資も必要だということを述べました。
そして、株式と債券の両方に投資する投資商品として「バランスファンド」を、ごく簡単に紹介させていただきました。
特定の国のお金に偏らない
前稿となる11回目では、「特定のお金に偏った」投資をしない、ということでした。
これは何も「日本円が危ない」ということではなく、さまざまな国のお金を持つことで、その為替レートの差による利益、すなわち、為替差益を得ようという考え方を紹介しました。
この4つの「偏らない」投資こそ、投資の世界では「分散投資」といわれているものです。
「増やす」ための投資と「価値を維持する」ための投資
拙稿がどのような方にご覧になられているのか気になるところですが、1回目から根気強くご覧いただいている読者の皆さまはご存知の通り、「すでにお金を持っている人」を対象にした投資について書いています。
1回目から本稿に至るまで、本連載「現金のリスク」のテーマは、「お金を増やす」ことが目的の投資ではなく、「(すでにお持ちの)お金の価値を維持する」ことが目的の投資です。
ところで、投資の目的は「(すでにお持ちの)お金の価値を維持する」ことだけなのでしょうか?
「お金を増やす」ことを目的とした投資って、やっぱり難しいものなのでしょうか?
そもそも、お金がないと投資はできないの?
「お金がないと、投資はできないのでしょうか?」
という疑問を投げかけると、
「当たり前じゃないか! ふざけるな!」
と、お怒りになる読者もいらっしゃるかも知れませんね。
はい、お怒りはごもっともです。確かに投資は、「元手がゼロ」ではできません。
「投資してみたいけど、元手がないのよね~」とおっしゃる方は、まずは日々の生活とともに家計を見直して、少しずつでも良いのでお金を貯めて、投資するための資金、すなわち「元手」をご準備なさってくださいな。
「少ない元手で大きく増やせる投資ってないの?」
はい、もちろん、ありですよ。投資の目的って、やっぱり人それぞれですから。
投資の元手を準備するために家計を見直し、お金を貯めてみてはいかがでしょうか?
筆者が投資を始めた目的は「副業の代わり」?
ここで、筆者が投資を始めた目的についてお話ししたいと思います。
筆者が投資を始めたのは、まだ20歳代の、サラリーマンだった頃でした。
営業所に勤務していた時には、夜勤や残業があったので、お手当をたっぷりいただいていました。
なので、たっぷりのお手当を貯金に充てていたのです。
ところが。
「本社勤務」に栄転(?)した途端、夜勤や残業がなくなり、たっぷりのお手当がそっくりなくなってしまいました……。その結果、なんと、お給料の手取りだけでは家賃の支払いすら、ままならなくなってしまったのです。
先述の通り、お手当を貯金に充てていましたので、貯金を取り崩せば、何とか生活することができました。しかし、本社勤務がいつまで続くのか、いつ営業所勤務に戻ることができるのか、皆目、検討がつきません。
貯金を取り崩しているだけでは、お金はみるみるうちに減っていくだけです。
「貯金がいつ底をつくのか」という恐怖心が付きまといました。加えて、副業も厳しく禁止されている会社です。
そんな時、新聞広告の見出しが目に留まりました。
『銀行で投資信託が買える』……世に言う「投資信託の銀行窓販解禁」です。
そこで、先述の少しばかりの貯金の一部を……そうです、投資に充てることを思いつきました。自身が副業するのではなく「お金に働いてもらう」ことにして、「貯金の寿命を延ばす」ことを考えたのです。
そして、銀行の窓口に投資信託の相談に行き、投資信託に投資するための手続きも行いました。
これが筆者が若い時の「投資の目的」であり、また「投資を始めたきっかけ」でもあります。
「私に合う投資」って?
繰り返しになりますが、投資を行うには元手が必要です。
だからといって、何十万円もの大金は必要ありません。投資を始めるなら、少額でもOKですよ。
「少額って、いくらなの?」
「一括(=一度だけ)の投資」なら、1万円からOKです。
「積立(=毎月、こつこつ)の投資」なら、1000円から始められるサービスもあります。
そうなんです。投資には「積み立て」感覚で行うやり方だってあるんですよ。
筆者が考える「私に合う投資」=ライフスタイルやライフプランニングで異なる投資
投資は、投資を行う方の年代や目的によって、そのやり方が異なってくると筆者は思っています。そうです、投資のやり方って、ライフスタイルやライフプランニングによって異なるんです。
筆者が考える「私に合う投資」、つまりライフスタイルやライフプランニングによって異なる投資のイメージを、以下の表にざっくりとまとめてみました。
年代 (ライフスタイル) |
目的や現在の状況 (ライフプランニング) |
投資のやり方 |
---|---|---|
60歳代以上 (子育てが終わっている*) |
まとまった現金をお持ちで、 老後資金の準備も十分。 |
「お金の価値」を維持する 分散投資 |
50歳代~60歳代前半 (子育てが終わっている*) |
現金や貯蓄性の生命保険が少なく、 これから老後資金の準備を行う。 |
積み立て分散投資 |
30歳代~40歳代半ば (DINKSや独身の方) |
まとまった現金はないが、 毎月なら投資資金が出せる。 |
積み立て集中投資と 個人年金保険の併走 |
20歳代~30歳代半ば (お子様が5歳以下) |
お子様の進学資金のため。 | 積み立て分散投資と 学資保険の併走 |
40歳代半ば以下 (家族構成に関わらず) |
潤沢な余裕資金を持っていて、 ライフイベントに充てる資金も 十分にある。 |
「お金の価値」を維持する 分散投資と集中投資の併走 |
年齢に関わらず | とにかくお試しでやってみたい | 集中投資 |
*お子様が大学生など、子育てが終わっていないものの、今後の教育資金の目途が立ってる方も含みます
拙稿では、これまで「偏らない投資」として分散投資について述べてきましたが、上の表では「集中投資」という言葉が出ています。
そうなんです。実は、ライフスタイルやライフプランニングによっては、分散投資よりも、集中投資の方が望ましい場合もあると、筆者は考えています。
集中投資については、もう少し後の方で述べてみたいと思います。
次回からは「ライフスタイル別&ライフプランニング別の投資」についてです。
その1回目は「お金の価値を維持する分散投資、その商品の選び方」です。
(次回は3月16日を予定しています)