コロナ禍は信用・信頼を試すリトマス紙

コロナ禍の時代は、まだまだというか、ますます混沌としてきました。
先が見えない時代に、いかに信用を築いていけるか?
コロナ禍が災いして信用失墜をしたケースも少なくありません。
明日は我が身! しかし、企業も人も、いい換えれば、逆に、信用を築くまたとないチャンスと捉えることもできます。
過去になにか失敗していたとしても、起死回生、復活、再生のチャンスでもあると見たらどうでしょう?

橋本さんは「当初、コロナで企業がバタバタ倒産すると思われていたのですが、公的な助成金や、銀行の融資によって、持ちこたえている会社やお店の頑張りがあって、倒産件数はむしろ減少傾向にあります。ただし、企業はどこまで踏ん張っていけるのか、コロナ禍が明けた頃、息切れしなように、我々の仕事も単に調査するだけでなく、企業の存続をサポートする講座などを企画もしています」といいます。

そんな側面から、コロナ禍で生き延びる企業は信用を勝ち得ていくわけで、それは個人が社会で信用を得るためにも、大いに参考になると思います。

水への投資 世界的に不可欠な資源への投資機会 BNPパリバ・アセットマネジメント

そこで、コロナ禍をタフに生き抜くポイントを橋本さんに挙げてもらいました。

①信頼の源泉はポジティブから!

橋本さんいわく「企業の規模に関わらず、苦境のときこそ、ポジティブになること」が大事で、「少しでも後ろ向きになると信用からもどんどん遠ざかっていく」と。

②信頼を促成するのは柔軟さ

「柔軟に変化に対応できる企業は生き残っています」と橋本さん。ポジティブとはいい換えれば、変化に対応できること。「飲食ではいち早く、デリバリーやテイクアウトにシフトしたお店は生き残っていまます。既存店舗のアイドルタイム(店舗の空き時間)に唐揚げを導入した例や、居酒屋で知られるワタミさんが焼肉に業態を変えたり、そうした試みは象徴的ですね」と橋本さん。
これは個人の生き方にも参考になります。ダメなものに執着しないで、しなやかに変化を遂げること、ワクワクして、ポジティブになれます。

③信頼の証は内部留保=資金力

儲けが出たら、これまでは、設備投資に使っていくのが企業の常識だったが、コロナ禍のような時代だと、内部留保がものをいうと!
個人の暮らしでも、ボーナスがたくさんもらえたり、思わぬ臨時収入があったとしても、すぐに消費してしまうのではなく、ある程度は貯えて、備えておけば慌てなくてすみそうです。

「その目安は人それぞれでしょうけど、家族がいれば1年分、若い独身の方なら向こう1カ月分の生活費は最低、貯金しておくと良いと思います」と橋本さん。
さらに「個人のバランスシート(貸借対照表)を作ってきちんと管理しておくことをお勧めします」と橋本さん。

住宅ローンは借金でも、不動産という資産ができるので、バランスはとれているのですが、たとえば、「彼女の気を引こうと消費者金融で借りまくってプレゼントやデートにお金を費やしたが振られてしまった」みたいな残念な結果は、1円の資産にもならず、しかも、債務超過で返済金に窮するのでは、やがて信用を失ってしまいます。
口座が焦げ付いて、引落ができないと、クレジットカードの審査に通らないブラックリストに載ってしまうかも!

そう考えると、生活費とあわせて、返済など、さまざまな引き落とし分を含めて、最低でもひと月先までは口座に余裕を持っておきたいし、急な病気や怪我で身動きとれないことも考えると、数カ月くらいは……内部留保しておきたいですね!!

バランスシートのイメージ
貯えがあることが信用につながることもある。貯えをふやすには「個人でもバランスシートを作って管理しておくといい」と橋本さんはアドバイスする

④信用に寄り添う右腕がいるか?

橋本さん曰く「本多宗一郎さんと藤沢武夫さんの関係のように一流の企業家には優れた右腕がいる」と。
個人でも、どんなにその人が、窮地に追い込まれても、支えになってくれるパートナーの存在は大切です。夫婦、家族、親友……自分には一体誰がいるのか?
この連載でも、お金も何もすっからかんになっても、最後に誰かが傍にいたら人は救われ、再生することを学んできました。

あらためて、スマホの連絡先を見ながら、誰が寄り添ってくれるだろうかと、眺めてみることにいたしましょう。

コロナ禍は、人を人との距離も遠ざけた感はありますが、SNSで何人と繋がっていることよりも、いざというときに親身になってくれそうな友人たちに、果たして自分はどこまで信用を得ているのか?
一度考えるも良い機会だとつくづく思いました。
筆者も自分自身をチェックします!

橋本さんの「信用はすぐにはたまらない。こつこつとした積み重ねです」と言う言葉を座右の銘に!
人と繋がる社会に、信用は本当にお金で買えないパスポートです!

橋本さんが勤める帝国データバンクのお勧め本をご紹介します。

『コロナ倒産の真相』表紙

2021年5月の新刊
コロナ倒産の真相
帝国データバンク情報部編(日経プレミアシリーズ)

2017年刊の『あの会社はこうして潰れた』(日本経済新聞出版)の姉妹編。コロナ禍の最中に破綻した23の企業について詳しく解説。読み物としてコロナ倒産の裏側を興味深く読める本です。

メルマガ会員募集中

ESG特集