投資といって真っ先に思いつくのは「株式」ですが、株のほかに、個人向け国債や社債などの「債券」という金融商品もあります。どちらも個人投資家にとって身近な投資対象として位置づけられますが、株と債券は投資商品として見ると正反対ともいえるほどの違いがあります。どのような違いがあるのか、具体的に見ていきましょう。

  • 株はハイリスク・ハイリターン。上昇・下落の値幅が大きく、元本も保証されない
  • 債券はローリスク・ローリターン。償還期限まで保有すると元本が戻ってくる
  • 株式のほうがメジャーな印象があるが、昨今の金利上昇で債券の注目度も高まる

株と債券は投資対象の代表格

世の中にはさまざまな金融商品があります。私たち個人投資家が投資できる金融商品には株、債券や投資信託、不動産投資、FXなどさまざまな種類がありますが、中でも「伝統的資産」とも呼ばれる、最もメジャーでポピュラーな投資対象が株と債券です。投資信託も、その中身には株や債券が含まれています。

投資対象の代表格ともいえる株と債券の共通点は、企業などが資金調達のために発行することです。しかし、金融商品としての両者の性格は大きく異なり、投資家にとっての魅力も異なります。ここからは、株と債券それぞれの特徴や、投資対象としてのメリット、注意点について見ていきます。

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株はハイリスク・ハイリターン

株(株式)とは、株式会社が出資者に対して出資額に応じて発行する証券のことです。株には価格(株価)があり、絶えず変動しています。

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証券取引所に株を上場している企業を「上場企業」といいます。上場企業の株は、証券会社を通していつでも購入・売却することが可能です。ちなみに日本全国の株式会社のうち、上場企業の割合はわずか0.2%程度にすぎません。実は、ほとんどの会社の株を一般の個人投資家は直接買うことができないのです。

株式投資で得られる利益

株は、購入したときより株価が上がっていれば、売却することで利益を得られます。ただし、買うときも売るときも所定の売買手数料を証券会社に支払う必要があるので、注意が必要です。

投資家が株式投資で得られるのは値上がり益だけではありません。配当金や株主優待による利益も期待できます。ただし、配当金と株主優待は、企業の方針や経営状態によっても左右されます。経営状態が悪化すれば配当金が減るか、無配になる場合もあります。また、株主への利益の分配を商品やサービスで支払う株主優待については、最近は縮小や廃止する企業が増えています。

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株式投資のリスク

株は預金などと違って、投資元本が保証されていません。株価は企業の経営状況だけでなく、日本経済や世界経済の動向などによって変動します。このあと紹介する債券と比べると、株価は上昇・下落の値幅が大きいのが特徴です。

そして、もしも株を発行した企業が破たんしたら株価は暴落し、大きな損失が発生してしまいます。投資家にとって、株はハイリスク・ハイリターンな投資対象といえるでしょう。

債券はローリスク・ローリターン

債券も株式と同じく、企業などの団体(発行体といいます)が資金調達を行う手段ですが、株式は「出資者を募る」という意味合いがあることに対し、債券は「貸付者を募る」という意味合いが強い点が異なります。企業などの発行体にとって、債券はどちらかというと銀行からお金を借りるのに近い資金調達手段といえます。

株式の発行体は企業(株式会社)のみですが、債券は企業だけでなく、国や自治体なども発行体になります。国が発行体になる債券は「国債」、自治体は「地方債」、企業は「社債」と呼び分けることが一般的です。

なお、個人投資家にとって最も身近な債券は「個人向け国債」という商品ですが、商品設計がやや特殊なので、以下に述べる内容は個人向け国債を除いた、証券会社で購入できる社債などを対象とします。

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債券投資で得られる利益

発行体にとって、債券は銀行の借り入れと同じ「返さなければいけない借金」です。そのため、投資家は債券を満期(償還といいます)まで保有していれば、原則として元本を受け取ることが可能です。そして、発行体は債券を買ってくれた投資家に利息を支払います。この利息が、債券を保有する投資家が得られる利益となります。

債券には「新発債」と「既発債」があります。新発債は株式のIPOと同じように、企業などがこれから発行する債券のことです。新発債の価格と利率はあらかじめ決まっています。投資家は証券会社に購入を申し込み、希望者が多数の場合は購入者が抽選で決まるのもIPOと同じです。

既発債は、すでに発行された債券のことです。株式を証券会社で売買できるのと同じように、既発債も証券会社で購入できる場合があります。また、保有している債券は、償還を待たずに途中で売却できます(「中途換金」「中途売却」といいます)。そして、債券も株式と同じく価格が変動します。債券の売買は時価で行うことになるため、新発債を申し込んだ価格、あるいは既発債を購入した価格より現在の価格の方が高くなっていれば、売却益を得ることができます。

債券投資のリスク

債券価格が変動する要因としては、株式と同じく発行体の経営状態や世の中の経済動向が挙げられますが、世の中の金利の影響を受けることが大きな特徴です。世の中の金利が上昇すれば、すでに発行された債券の価格は下がりやすくなり、逆に金利が下がると債券価格は上がりやすくなります。

ただし、一般的に債券価格は株価と比べると値動きが穏やかです。ローリスク・ローリターンの投資を行いたい方は、株式より債券のほうが適しているでしょう。

重要な注意点として、株式と同じように、債券も発行体が経営破たんするリスク(信用リスクといいます)がある点が挙げられます。発行体が債務不履行に陥ると、債券を保有する投資家は利息が受け取れないだけでなく、元本が償還されず、大きな損失が出てしまう可能性もあります。

信用リスクのイメージ
発行体によって信用リスクは異なる。一般的に信用リスクが高ければ利率は高く、信用リスクが低ければ利率は低くなる

信用リスクに備えて、信用度の低い発行体が発行する債券は利率が高めに設定されていることが多くなっています。発行体の信用リスクを示すのが「信用格付け」で、「AAA」が信用リスクの最も低い最高の格付け、「D」が最低の格付けというように、A~Dのアルファベットで示されるのが一般的です。格付けAAAの債券は経営破たんの可能性はきわめて低いものの、期待できる利益はわずかです。逆に、格付けBの債券はうまくいけば大きな利益を得られますが、債務不履行の可能性が小さくないので、注意が必要となります。

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債券を購入するときは、信用リスクと利率のバランスが取れているかも確認するようにしましょう。

株はメジャーだが債券の注目度も高まる

株と債券はどちらも代表的な投資対象として知られていますが、株価はニュースなどでも取り上げられていることから、どちらかといえば株式のほうがメジャーな印象はあるかもしれません。株式は短期間で価格が大きく変動することもあり、ハイリスク・ハイリターンな投資に適しています。また、長期的に保有して、配当金や株主優待を受け取るというスタイルの投資方法も可能です。

一方、債券は株ほどにはメジャーではないものの、昨今は金利上昇の兆しが見られていることもあり、注目度が高まりそうです。発行体が債務不履行に陥らない限り、利息が受け取れて、元本が確保される点が債券の魅力です。超低金利の世の中では新発債の利率も低く設定されてきましたが、世の中の金利が上がれば、新発債の利率は魅力的なものになりそうです。債券投資がローリスク・ローリターンの投資手法として、個人投資家の間でも定着していくかもしれません。

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どのようなスタンスで投資を行いたいかを考え、ご自身のスタイルに合う投資を実現していきましょう。

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